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ss200916レベル1のヘルゲート「ビフォー犬の躾は基本です」

ss200916レベル1のヘルゲート「ビフォー犬の躾は基本です」:

「聖母様、どうか彼をお守りください」

あたしは一心不乱に祈ります。
そう、あたしはこの聖母教会で巫女をしています。
そんなあたしが恋をしました。
いえ、別に恋をしていいんです。

だって聖母様は全人類の母、
母という事は結婚している(いない人もいる)という事。
聖母様は子だくさんでもあります。
ですから結婚や親子を守護するありがたーい縁結びの神様でもあります。
共働きも片親応援もばっちりの神様です。
だから、既婚者の巫女もざらにいます。

「あーら、あなた何を聖母様に熱心にお祈りしているのぉ」

「あ、聖女さま。ごきげんよう。べ、別にそんなに熱心に
祈っている訳ではいえ、巫女たる者が聖母様をないがしろに
しようとしている訳ではありません」

あたしはしどろもどろ答えた。
何しろ、聖女様は生ける聖母様とされているお方。
癒しや祝福の力が通常の人や魔術師よりも計り知れないほど
強力な力をお持ちの方なのです!
尊敬しているのですがちょっとまずい所に来られたなぁと・・・

「あなた、恋をしているんでしょう。さ、あたくしにお話しなさいな❤」

そう、人の恋路に首を突っ込むのが三度の飯より好きな方なのです!
あたしは肩を出して胸の上と下を細い帯でドレスを締めている
胸が大きく強調された白いドレスを着た聖女様に
ほっぺたをつままれて話すように促される。

「いたひですぅ、聖女様ぁ。離してくださいぃぃいいいいい」

「じゃぁ、あたくしに話しなさいな」

あたしは渋々話し出した。
彼は異世界人でこの世界に迷い込んだこと。
役所の斡旋で食堂の出前持ちをしていて
あの強力な魔法がかかった自転車を乗りこなしていて
本人にはその自覚が無いこと。
王立魔術学院の魔術師たちがその事で
彼に興味を持ち、出前を持ってこさせると称して
彼と闘う事で実際は研究している事などを
話した。

すると聖女様が
あらぁ、そんな事があったのね。
それで貴女は彼に『恋』をしたのね♪」

あたしは真っ赤になって両手を振って

「ち、違いますぅ。恋だなんてそんなおこがましい。
あたしは巫女ですから全人類の幸せの為に
祈るお仕事で精一杯ですぅ」

すると聖女様はその麗しい顔をキラキラ輝かせながら
「何を言うの。全人類愛と恋は対等よ。
いえ、恋する乙女は最強なのよ。
というかぁ実は聖母さまよりご神託があったの」

「え?ご神託といいますと・・・?」

「んもう、鈍いわね。貴女が一生懸命祈るから
彼の身に危機が迫っているのよ。
あの王立魔術学院が彼の出前を邪魔するために
ケルベロス使いの漆黒の魔女を
相手に選んだのよ。
ケルベロスと言えば、この『犬嫌がり』の草が
有効よ。
これを彼の元に持って行って・・・」

あたしは聖女様の手からひったくじゃなくて
恭しく『犬嫌がり』の草を受け取り
彼の元へと向かった。

そして彼にご神託の事はかなりはしょって伏せて
(というか、彼を目の前にするとうまく言えなくて
顔は真っ赤になるしもじもじして不審者になるし
あたしのバカバカバカ)
彼に伝えて『犬嫌がり』の草の入った袋を渡した。

その時、彼の手が私の手に触れてきゃぁっと
心臓がバクバクいったけれど、
なんとかこらえたのです!

いやぁぁああああ手洗えないどうしよう。
なーんて他人からみたら挙動不審になって
教会に帰ると、
「じれーたいじれーたい♪」と
聖女様に歌われてしまったのでした。

だけど負けない!
いつか彼と交換日記をするのが次の私の野望なのです!


善き事がありますように。

お読みいただきありがとうございました。

宇宙生物ぷりちーぴm(__)m

テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

9ss200909レベル1のヘルゲート「犬の躾は基本です」

9ss200909レベル1のヘルゲート「犬の躾は基本です」:

「あづい」

俺は出前の配達の愛自転車を
漕ぎながらつぶやいた。

秋だというのに太陽はいまだに
夏のバカンスを楽しんでいるような
暑さを振りまいている今日この頃だが、
なんとなくつぶやくこの言葉に
郷愁を漂わせるのは仕方がない。

俺は食堂にたどりつく。
自転車を片づけ店に入り、
「ただいま戻りました」と店長に声をかける。
「おう、ご苦労さん。賄い飯食べろよ」
と店長が声をかけてくる。
その声に応えながらそっとつぶやく。
「いつになったら俺の世界に帰れるんだろ、はぁ」
あ、俺、唯の出前のバイトだけど、
今いる世界、地球じゃなくて異世界ナンデス。

いやぁ、最初は困ったよ?
何しろここはどこ?家はどこ?腹減ったどうしよう
と悩んでいたら、
この世界では異世界人って結構出現するらしく、
対応ばっちりお役所仕事サクサク進んで
家も職ももらえて、一応元の地球の移転時間に
合わせて戻れるよう確認してくれるという
親切ぶりだった。

で、紹介された職が住み込みの食堂の出前持ち。
この世界って、魔法があるけれど
一般人はそんな大して使えない世界。
まだ馬車が活躍している生活水準なのに、
何故か自転車はあった。
何故だ?文明の発展手順が違うくね?
と思ったけれど、どうやら
俺より以前に異世界転移しちゃった人が
魔術師と協力して根性で作り上げたらしい。
でも、庶民にとってはちょっと手を出すのは
ためらう値段なのに、
何故か店長が持っていて、
俺に出前の時に使えと貸してくれた。
ただし、出前の中身がこぼれない装置は
開発してくれなかったので、
俺は店長のシゴキじゃなくて猛特訓で
中身をこぼす事無くお客さまに届ける
事ができるようになった。

「で、店長。次の出前先はどこですか?」
おれは賄いの飯を食べ終えて店長に尋ねた。
「おう、いつもの『ヘルゲート』だ」
俺の身体に緊張が走る。
「王立魔術学院ですね」
「そうだ。そこへ出前だ」

ー王立魔術学院。そこは偏屈魔術師の集まりだった。
本来、国の一機関に出前を届けるのに
身構える必要はない。
だが、そこは偏屈魔術師の巣窟。
自分の魔術を使いたくてたまらない連中の集まりだ。
裏門?怪しげな魔術道具が所狭しと置かれていて
いつ何が発動するかわからない道を通れるのは
魔術に精通する業者でないと危なくて仕方がない。
それでもこの国ではレベル1の穴場と言われている。
  正門は「休戦協定」というやつが発動しないと
一般人は通れない。
それなしで唯一出前を届けられるのがこの俺だ。
「アイサー、出前はこれですね。
届けてきます」
「おう、気を付けてな」
店長がお玉を振って合図する。
愛自転車にまたがり
出前へと疾走した。

いや、しようとした丁度その時。

「食堂の店員さん」

声をかけてきたのは、聖母教会の巫女さんだ。

「あ、巫女さんこんにちは。
今日は教会のお使いですか」

すると彼女はもじもじして小さな声で

「あのうそのう、実は私今日夢であなたが
大変な目に遭うのを見たんです。
それでそのう、これを持って行って下さい」

そう言って差し出したのは、
茶色い小さな巾着だった。

「大変な目?ああ、今日は王立魔術学院に
出前に行きますからね。
確かに面倒と言えば面倒ですね」

「あのそのこ、この袋を危険が差し迫ったら
危険な場所に投げてください。
そ、そうして『・・・・』と言って下さい」

「そうですか。分かりました、ありがとうございます。
それでこのお代は、おいくらですか」

すると彼女は顔を赤らめて、恥ずかしそうに

「いえ、お代なんていりません。
神の御心に従っただけですので」

「それじゃぁ悪いですよ。
んじゃぁ、今度献金に伺います。
それじゃぁ失礼しますね」

すると彼女は

「はい、それでしたら。ありがとうございます。
神のご加護がありますように」

そう言って深々と俺にお辞儀をするのだった。

そして王立魔術学院の正面ゲートに
到着した。

「おーほほほほっ。待っていたわよ」

そこには三つの首を持つ犬を従えた、
漆黒の髪、真っ赤な唇の派手な美女が
待ち構えていた。
しかもご丁寧に、身体にフィットした
黒い皮革の服を着こんだナイスバディ。
首には首輪を手には鞭を持っている。

俺は、この暑いのに暑苦しい魔術師を
突破するなんて嫌だなと思ったが、
既に目の前にいるので
何とかするしかない。

「これ終わったら、かき氷食べるぞぉ」

俺は気力をふるい立たせて
ペダルを踏みこみ門へと入り込んだ。

漆黒の魔女とやらは

「お行き、ケルベロスっ
今日こそはあの憎き出前男を
倒すのよっ」

「させるかぁ、俺は出前を頼んだ
管理人さんに無事、この出前を
渡すんだぁあ」

そして三つの頭を持つ地獄の番犬
ケルベロスが俺に向ってくる。
しかし俺は、ブレーキをキキキキキィとかけて
止まりながら、
巫女さんがくれた茶色の巾着袋を目の前に
突き出した。
そして巫女さんから言われた言葉、
「おすわりっ」
と叫んだ。

するとどうだろう。
ケルベロスが俺の突き出した袋の前で止まり、
ふんふんと袋の匂いを嗅ぐと
嫌そうな顔をしてキューンと鳴いて
目の前でお座りをしたのだ。

漆黒の魔女?だっけ。
彼女はおろおろして

「ケルベロス、何をしているの!
その袋は!聖母教会特性
『犬嫌がり』の草が入っているはね。
可愛そうに。ひどい!ケロちゃんに
こんな袋を近づけるなんて。
おーよしよし。もう大丈夫だからね。
ほーらほら、特注ドッグフード『ベロベロ』を
食べて機嫌をなおしてねぇ」

「・・・・・ま、いっか」

こうして俺は漆黒の魔女?だっけを倒した。
そうして王立魔術学院の玄関にたどりつくと、
管理人さんに出前を渡し、代金を受け取った。

「あづい」
かき氷食べたい。
そう思いながら愛自転車のペダルを漕ぎながら
食堂へと帰るのだった。


善き事がありますように。

お読みいただきありがとうございました。

宇宙生物ぷりちーぴm(__)m

テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

ss181008レベル1のヘルゲート「嵐を呼ぶ男」

181008 9:レベル1のヘルゲート「嵐を呼ぶ男」:ss

「あっちぃ~」
俺は出前の配達の愛自転車を
漕ぎながらつぶやいた。
風は秋の涼しさを運び、木々の葉は紅葉する
今日この頃だが、なんとなくつぶやくこの言葉に
残暑を感じる。
実りの秋になんだか腹が減るのが
早いような気がする。
秋はサツマイモと連想する俺は
アホな男児と変らないなと苦笑する。

自転車を片づけ店に入り、
「ただいま戻りました」と店長に声をかける。
「おう、ご苦労さん。賄い飯食べろよ」
と店長が声をかけてくる。
その声に応えながらそっとつぶやく。
「いつになったら俺の世界に帰れるんだろ、はぁ」
あ、俺、唯の出前のバイトだけど、
今いる世界、地球じゃなくて異世界ナンデス。

いやぁ、最初は困ったよ?
何しろここはどこ?家はどこ?腹減ったどうしよう
と悩んでいたら、
この世界では異世界人って結構出現するらしく、
対応ばっちりお役所仕事サクサク進んで
家も職ももらえて、一応元の地球の移転時間に
合わせて戻れるよう確認してくれるという
親切ぶりだった。

で、紹介された職が住み込みの食堂の出前持ち。
この世界って、魔法があるけれど
一般人はそんな大して使えない世界。
まだ馬車が活躍している生活水準なのに、
何故か自転車はあった。
何故だ?文明の発展手順が違うくね?
と思ったけれど、どうやら
俺より以前に異世界転移しちゃった人が
魔術師と協力して根性で作り上げたらしい。
でも、庶民にとってはちょっと手を出すのは
ためらう値段なのに、
何故か店長が持っていて、
俺に出前の時に使えと貸してくれた。
ただし、出前の中身がこぼれない装置は
開発してくれなかったので、
俺は店長のシゴキじゃなくて猛特訓で
中身をこぼす事無くお客さまに届ける
事ができるようになった。

「で、店長。次の出前先はどこですか?」
おれは賄いの飯を食べ終えて店長に尋ねた。
「おう、いつもの『ヘルゲート』だ」
俺の身体に緊張が走る。
「王立魔術学院ですね」
「そうだ。そこへ出前だ」
ー王立魔術学院。そこは偏屈魔術師の集まりだった。
本来、国の一機関に出前を届けるのに
身構える必要はない。
だが、そこは偏屈魔術師の巣窟。
自分の魔術を使いたくてたまらない連中の集まりだ。
裏門?怪しげな魔術道具が所狭しと置かれていて
いつ何が発動するかわからない道を通れるのは
魔術に精通する業者でないと危なくて仕方がない。

  正門も「休戦協定」というやつが発動しないと
一般人は通れない。
それなしで唯一出前を届けられるのがこの俺だ。
「アイサー、出前はこれですね。
届けてきます」
「おう、気を付けてな」
店長がお玉を振って合図する。
愛自転車にまたがり
出前へと疾走した。

そして王立魔術学院の正面ゲートに
到着した。

何故か王立魔術学院の
嵐だ。マジで。
正面ゲートから学院の正面玄関迄の道の上を
空に向かって風が渦巻いている。
そこだけ嵐になるように結界を張って
あるのだろう。
そして、正面玄関の屋根の上に
男がいる。
「わーハッハッハッ。
我こそは通称『嵐を呼ぶ男』と呼ばれる
大魔術師だ。
出前の男よ。この嵐を抜けて
出前を届けてみるがよい!
ただし出来るものならな」
(・・・こいつアホだ。
自分で自分の事を大魔術師と
呼んだり、恥ずかしい二つ名を
叫んだり・・・・関わりたくない)
俺は心底そう思ったが仕方がない。
第一、玄関と正門の間に相当
距離があるのに、直接通話
できる装置をつけて言う内容が
あんな自己紹介とか、
魔術の無駄遣いもいいところだ。
だが、そんな事に構ってられない。
嵐の先に俺の客がいるっ。
「その勝負、受けて立つっ」
俺はそう叫ぶと、
愛自転車ごと嵐に突っ込んだ。
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。
俺は地球の気象庁の
外出るな避難所に数時間前には
行ってろ電車も動かすなぁという
忠言を無視して嵐を突っ切る。
そしてー・・・・・
通称『嵐を呼ぶ男』こと大魔術師は
ふっと笑みをこぼす。
「ふふふ、数々の魔術師が破れた
出前の男もこの嵐の前に
吹き飛ばされたか」
「い~や、お客さん。
無事、嵐乗り越えました。
自転車で嵐の手前でジャンプして、
あんたの後ろに回り込んだんですよ。
出前です。受け取って代金下さい」
俺が通称『嵐を呼ぶ男』に
後ろから声をかけ、
出前の天丼を差し出す。
「おお!そう言えば出前を頼んだのは
俺だったな。
くぅ、出前がぐちゃぐちゃになっていないのを
喜ぶべきか悲しむべきか
偉大なる魔術師としてこの
状況をどう解釈すべきか」
「だ~か~ら~。代金下さい」
通称『嵐を呼ぶ男』はしぶしぶと
財布から代金をよこした。
「毎度あり~」

嵐は去った。
俺は正面ゲートから出る。
俺は愛自転車のペダルを踏む。
「どうせ災難な出前なら
魔女っ子がいいよな」
おれのささやかなリクエストが
叶う日はくるのだろうかと思いながら。


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テーマ : 今日のつぶやき
ジャンル : ブログ

ss180704レベル1のヘルゲート「踊らない猫」


ss180704レベル1のヘルゲート「踊らない猫」

「あっちぃ~」
俺は出前の配達の愛自転車を
漕ぎながらつぶやいた。
桜の花は既に散り、紫陽花も枯れかけている
今日この頃。
それでも、夏が来るのだと思うと
何だか元気になる俺は
アホな男児と変らないなと苦笑する。

自転車を片づけ店に入り、
「ただいま戻りました」と店長に声をかける。
「おう、ご苦労さん。賄い飯食べろよ」
と店長が声をかけてくる。
その声に応えながらそっとつぶやく。
「いつになったら俺の世界に帰れるんだろ、はぁ」
あ、俺、唯の出前のバイトだけど、
今いる世界、地球じゃなくて異世界ナンデス。

いやぁ、最初は困ったよ?
何しろここはどこ?家はどこ?腹減ったどうしよう
と悩んでいたら、
この世界では異世界人って結構出現するらしく、
対応ばっちりお役所仕事サクサク進んで
家も職ももらえて、一応元の地球の移転時間に
合わせて戻れるよう確認してくれるという
親切ぶりだった。

で、紹介された職が住み込みの食堂の出前持ち。
この世界って、魔法があるけれど
一般人はそんな大して使えない世界。
まだ馬車が活躍している生活水準なのに、
何故か自転車はあった。
何故だ?文明の発展手順が違うくね?
と思ったけれど、どうやら
俺より以前に異世界転移しちゃった人が
魔術師と協力して根性で作り上げたらしい。
でも、庶民にとってはちょっと手を出すのは
ためらう値段なのに、
何故か店長が持っていて、
俺に出前の時に使えと貸してくれた。
ただし、出前の中身がこぼれない装置は
開発してくれなかったので、
俺は店長のシゴキじゃなくて猛特訓で
中身をこぼす事無くお客さまに届ける
事ができるようになった。

「で、店長。次の出前先はどこですか?」
おれは賄いの飯を食べ終えて店長に尋ねた。
「おう、いつもの『ヘルゲート』だ」
俺の身体に緊張が走る。
「王立魔術学院ですね」
「そうだ。そこへ出前だ」
ー王立魔術学院。そこは偏屈魔術師の集まりだった。
本来、国の一機関に出前を届けるのに
身構える必要はない。
だが、そこは偏屈魔術師の巣窟。
自分の魔術を使いたくてたまらない連中の集まりだ。
裏門?怪しげな魔術道具が所狭しと置かれていて
いつ何が発動するかわからない道を通れるのは
魔術に精通する業者でないと危なくて仕方がない。

  正門も「休戦協定」というやつが発動しないと
一般人は通れない。
それなしで唯一出前を届けられるのがこの俺だ。
「アイサー、出前はこれですね。
届けてきます」
「おう、気を付けてな」
店長がお玉を振って合図する。
愛自転車にまたがり
出前へと疾走した。

そして王立魔術学院の正面ゲートに
到着した。

何故か王立魔術学院の
正面ゲートから学院の正面玄関迄の道の上の空が
おどろおどろしい雲に覆われている。
俺はごくりと唾を飲んだ。
そして愛自転車を走らせる。
(おかしい、妨害がない)
俺がいぶかしんでいると、
道の真ん中に来た所、
突如白い煙が現れ、魔女が現れた。
俺は、慌てて愛自転車を止める。
「・・・童女?」
いや、確かに魔女なんだよ?
魔女のとんがり帽子と黒いローブを纏っている。
「ふふふ、あたちを子供だと思って
あなどっていまちゅね」
「いや、小学生高学年程度でその『まちゅね』とか
言っているのはどうかと思うぞ」
俺が冷静につっこみをいれる。
そうだ、逆にこんな小さな時に王立魔術学院に
入学するという事はそれだけ魔力が高いと
いう事につながる。
俺は油断なく子供に対してかまえた。
「ふふふ、あたちの可愛い使い魔に
脅え慌てふためくがいい!いでよ、光と闇の魔獣よ」
彼女がそう叫ぶと、
俺と彼女の間に稲妻が落ちる。
そしてそこに現れたのは・・・
「白ネコと黒ネコ・・・」
そいつらはどことなく招き猫を連想させる
ふっくらした身体をまぁるくして
ニャーンと鳴いた。
そして眠った。
ひゅるるるる~。
暑い夏なのに、涼しい風が吹きわたる。
「で、俺はどうすればいいわけ」
「う、起きろ使い魔どもっ
ほ、本当はこいつら強いんだぞ。
お前なんかこいつらの烈風斬で
爪で引き裂かれるんでちゅ」
そう叫ぶ魔女の子供をしり目に
俺は、自転車から降りて、
猫達の喉をなでてやる。
ゴロゴロとのどを鳴らす猫達。
魔女の子供の目から涙が盛り上がる。
そしてうわーんと大泣き。
取敢えず、俺は出前を王立魔術学院に届けて、
急いで魔女の子供の所に戻って慰め、
猫の脚を俺の腕に当てて、
わーまいったぁと言った。

やっとの思いで魔女の子供のご機嫌を直し
正面ゲートから出る。
「疲れた」
俺はぐったりして愛自転車のペダルを踏む。
今までの戦いで一番疲れた出前だった。


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テーマ : 今日のつぶやき
ジャンル : ブログ

ss180330レベル1のヘルゲート 「細菌兵器にご用心」

180330レベル1のヘルゲート 「細菌兵器にご用心」

「ああ、桜がきれいだなぁ」
俺は出前の配達の愛自転車を
漕ぎながらつぶやいた。
街路樹は桜色に染まって華やかだ。
でも、本当はこれは桜ではないらしい。
だけどいいのだ。春だから。
俺はなんとなくウキウキしながら店へと戻った。

自転車を片づけ店に入り、
「ただいま戻りました」と店長に声をかける。
「おう、ご苦労さん。賄い飯食べろよ」
と店長が声をかけてくる。
その声に応えながらそっとつぶやく。
「いつになったら俺の世界に帰れるんだろ、はぁ」
あ、俺、唯の出前のバイトだけど、
今いる世界、地球じゃなくて異世界ナンデス。

いやぁ、最初は困ったよ?
何しろここはどこ?家はどこ?腹減ったどうしよう
と悩んでいたら、
この世界では異世界人って結構出現するらしく、
対応ばっちりお役所仕事サクサク進んで
家も職ももらえて、一応元の地球の移転時間に
合わせて戻れるよう確認してくれるという
親切ぶりだった。

で、紹介された職が住み込みの食堂の出前持ち。
この世界って、魔法があるけれど
一般人はそんな大して使えない世界。
まだ馬車が活躍している生活水準なのに、
何故か自転車はあった。
何故だ?文明の発展手順が違うくね?
と思ったけれど、どうやら
俺より以前に異世界転移しちゃった人が
魔術師と協力して根性で作り上げたらしい。
でも、庶民にとってはちょっと手を出すのは
ためらう値段なのに、
何故か店長が持っていて、
俺に出前の時に使えと貸してくれた。
ただし、出前の中身がこぼれない装置は
開発してくれなかったので、
俺は店長のシゴキじゃなくて猛特訓で
中身をこぼす事無くお客さまに届ける
事ができるようになった。

「で、店長。次の出前先はどこですか?」
おれは賄いの飯を食べ終えて店長に尋ねた。
「おう、いつもの『ヘルゲート』だ」
俺の身体に緊張が走る。
「王立魔術学院ですね」
「そうだ。そこへ出前だ」
ー王立魔術学院。そこは偏屈魔術師の集まりだった。
本来、国の一機関に出前を届けるのに
身構える必要はない。
だが、そこは偏屈魔術師の巣窟。
自分の魔術を使いたくてたまらない連中の集まりだ。
裏門?怪しげな魔術道具が所狭しと置かれていて
いつ何が発動するかわからない道を通れるのは
魔術に精通する業者でないと危なくて仕方がない。

  正門も「休戦協定」というやつが発動しないと
一般人は通れない。
それなしで唯一出前を届けられるのがこの俺だ。

「アイサー、出前はこれですね。
届けてきます」
すると店長が真面目な顔をして、
「お前、今日はこれを着てゲートをくぐれ。
それに出前にこのカバーをしろ」
「?レインコートですか。
雨降ってませんよ。しかも顔もカバー
かかってますね。」
「先ほど連絡が入った。
今日は玄関で大物が待っていると」
「大物?他に情報はないのですか?」
「いや、伝書鳩できたから詳細は
わからん。お前のいうレインコートという
代物も、魔術士配達員が届けてきた」
「だったら、そいつが出前を届ければ
いいだけの話だと思いますが。
いえ、なんでもありません。
アイサー、出動します」
店長の背後でオドロオドロシイ線が
出てきたので、俺は急いで
愛自転車にまたがり
出前へと疾走した。

そして王立魔術学院の正面ゲートに
到着した。
おかしい。いつもだったら変態じゃない
ちょっと言動のおかしい魔術師達が
ゲートと王立魔術学院への正面玄関迄の
道の間に見え隠れしているのに、
今日は静かだ。
俺は、ゲートを開けようとして、
出前にかかっているカバーを直し、
レインコートを深く被った。
そして門を開けようとするとー
とっさに俺は右へと愛自転車ごと逃げた。
突然、ゲートの門が突風と共に
開いたからだ。
「くっ今日の敵は風魔法か?
しかしそれにしてはシンプルな」
しばし観察すると、門は一定のリズムで
突風で開くようだ。
俺は意を決してゲートの内へ入った。
突風を野生の勘でかわしながら、
正面玄関へと愛自転車を進める。
そして、突風は正面玄関をも
開けているのを発見した。
そこで俺は、突風が止んだ隙に
正面玄関を開けて中へ滑り込んだ。

するとそこに居たのは
「ドラゴン!でかっ」
玄関いっぱいの大きさのドラゴンが
一頭、鼻をズピズピ言わせながら
へばっていた。
そして、ときどきゴホンゴホンと咳をし、
ブエックシュンとくしゃみをしていた。
「あ~やっときた。早く出前ちょうだい」
ドラゴンの口の近くから魔術師の少女が
出てきた。
彼女はドラゴンの鼻水らしき液体で
びちょびちょだった。
「あ、出前ありがとうございます。
このドラゴン、花粉症ですか?」
「違うわよ!風邪よ風邪っ
あたしはドラゴンマスターなんだけど、
この子ったら、ちょっとあったかいからって
湖で水遊びして、夜に身体冷やして
風邪ひいちゃったのよ。
喉が痛いのに風邪薬飲めなくて、
店長に頼んで出前のうどんに強力な
ドラゴンも一発で治る風邪薬を
仕込んでもらったのよ」
ぶえっくしょーいっ
その時、ドラゴンがすごいくしゃみをした。
魔術師の少女は急いでドラゴンにかけより
「ああ、ごめんね。喉が痛いのね。
このうどんを食べたら治るから食べてね」
と言ってうどんを食べさせた。
うどんには強力な眠り薬もあったらしく、
ドラゴンは食べ終える(と言っても一飲みだが)と
同時にズビズビ言いながら眠りについた。

「はぁ、これでやっと治るぅ」
魔術師の少女はそういうと座り込んだ。
「あの、これ貰いもので悪いんすけど
桜餡パンどうすか」
「あ、ありがとう。実はおなかすいていたのよね。
助かるわ」
そう言って俺が桜餡パンを渡そうとした時、
俺の鼻がむずむずしてくしゅんとくしゃみをして
しまった。
「!!!!!!!!」
くしゃみは運悪く彼女の魔術師のコートに
かかってしまった。
ドラゴンの鼻水でぐしゃぐしゃのコートに。
「あ、すすいません」
「いやぁあああああ」
俺は彼女にビンタされて愛自転車をひっつかんだまま
正面玄関の扉にぶつかりゲートの門を超えて
叩きだされた。
チャリンチャリン。お代が俺にぶつかる。
「なんだよ、俺はドラゴン以下かよ」
俺はぶつぶつ言いながら愛自転車に乗って
店へと戻った。
その後、何故か風邪をひき、
ドラゴンも一発で治る風邪薬を飲まされたのだった。


宇宙雑貨ぷりちーぴ
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ジャンル : ブログ

プロフィール

ぷりちーぴ

Author:ぷりちーぴ
はじめましてちーぴ
主に4コマ・
ショートショートを
載せているちーぴ

(↑フィクションです。
実在の人物・団体等とは
関係ございません。
また、『SS』とは
ショートショートの
略として用いております)

地球のどこかで暮らす
宇宙生物ちーぴ。

*4コマの記念日はウィキを
参照しております。




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