SS221014ビターなナイフを持つ彼女12
SS221014ビターなナイフを持つ彼女12 :
隣の席の彼女は鋭い刃物
彼女は心臓にナイフを
握りしめている。
僕と彼女以外だれもいない教室。
彼女は儚げな西日を背に
僕を見つめている。
りりりりと虫の声がする。
「『餌』、お前はどこからきた?」
彼女が僕を問いつめる。
「だから僕はクラスメートの・・・」
「お前の名前なんかどうでもいい。
お前は私と同じだ。
同じ『魔狩り』だ」
僕は息を吞んだ。
「た、確かにこのヨーヨーを使って
魔物を、その、喰らったけれど。
だけどっ僕は人間だっ」
すると彼女は長くて綺麗なまつ毛を伏せて
「いい。お前が人間だろうが魔狩りだろうが。
魔を倒せればいいんだ。ほら、やってきた」
夕陽の落ちるその前の
細い陽の光の黄昏時に
魔はちろちろとその影を伸ばした。
「例えるならば蛇か・・・」
彼女がつぶやく。
「おい、『餌』。相手は巨大すぎて
戦いづらい。
多分、頭を潰せば倒せるだろう。
お前は、あいつを細切れにしろ、ヨーヨーで」
「だ・か・ら、僕は『餌』じゃないって。
まぁ、いいか。実力で認めさせてやるよっ」
僕はヨーヨーに、自分の気をのせて投げて
蛇の魔物を細切れにする。
そして、魔物の気を喰らいつくす。
どさりと蛇の魔物の頭が落ちる。
ぴくぴくと動く魔物の頭。
それを見ていた彼女が苦しそうに心臓から
【ビターなナイフ】を取り出した。
彼女は【ビターなナイフ】を僕に向けた。
僕は喰らった魔物の気を溜めたヨーヨーを
【ビターなナイフ】に巻きつけた。
ナイフが魔物の気を吸い取るのが分かる。
「ヨーヨーを外せっ」
彼女が叫んだ。
僕はすぐさまヨーヨーをナイフから外す。
ぴくぴくと動くだけだった筈の
蛇の魔物の頭が、真っ赤な目を見開いて
彼女に襲い掛かろうとしていた。
彼女は【ビターなナイフ】を真横に構えて、
魔物の開いた口を引き裂いた。
・・・日が暮れた。
魔物の後は何もない。
彼女は【ビターなナイフ】を心臓にしまった。
僕は手の中のヨーヨーを見た。
「僕は一体何者なのだろう」
「さぁな。だがこの世に平凡な
人間なんか一人もいやしない。
自分は弱者だと思いこんだ傲慢な人間と
自分は強者だと思いこんだ自惚れ屋が
いるだけなんじゃないか」
彼女はそういうと教室を去った。
僕はその彼女の後ろ姿をいつまでも見送った。
隣の席の彼女は鋭い刃物
彼女は心臓にナイフを
握りしめている
了
善き事がありますように。
お読みいただきありがとうございました。
サイドバーにある、お好きなアイコンを
ぽちりと押して下さり、
ショッピングなどのぞいて頂ければ
望外な喜びです。
宇宙生物ぷりちーぴm(__)m
隣の席の彼女は鋭い刃物
彼女は心臓にナイフを
握りしめている。
僕と彼女以外だれもいない教室。
彼女は儚げな西日を背に
僕を見つめている。
りりりりと虫の声がする。
「『餌』、お前はどこからきた?」
彼女が僕を問いつめる。
「だから僕はクラスメートの・・・」
「お前の名前なんかどうでもいい。
お前は私と同じだ。
同じ『魔狩り』だ」
僕は息を吞んだ。
「た、確かにこのヨーヨーを使って
魔物を、その、喰らったけれど。
だけどっ僕は人間だっ」
すると彼女は長くて綺麗なまつ毛を伏せて
「いい。お前が人間だろうが魔狩りだろうが。
魔を倒せればいいんだ。ほら、やってきた」
夕陽の落ちるその前の
細い陽の光の黄昏時に
魔はちろちろとその影を伸ばした。
「例えるならば蛇か・・・」
彼女がつぶやく。
「おい、『餌』。相手は巨大すぎて
戦いづらい。
多分、頭を潰せば倒せるだろう。
お前は、あいつを細切れにしろ、ヨーヨーで」
「だ・か・ら、僕は『餌』じゃないって。
まぁ、いいか。実力で認めさせてやるよっ」
僕はヨーヨーに、自分の気をのせて投げて
蛇の魔物を細切れにする。
そして、魔物の気を喰らいつくす。
どさりと蛇の魔物の頭が落ちる。
ぴくぴくと動く魔物の頭。
それを見ていた彼女が苦しそうに心臓から
【ビターなナイフ】を取り出した。
彼女は【ビターなナイフ】を僕に向けた。
僕は喰らった魔物の気を溜めたヨーヨーを
【ビターなナイフ】に巻きつけた。
ナイフが魔物の気を吸い取るのが分かる。
「ヨーヨーを外せっ」
彼女が叫んだ。
僕はすぐさまヨーヨーをナイフから外す。
ぴくぴくと動くだけだった筈の
蛇の魔物の頭が、真っ赤な目を見開いて
彼女に襲い掛かろうとしていた。
彼女は【ビターなナイフ】を真横に構えて、
魔物の開いた口を引き裂いた。
・・・日が暮れた。
魔物の後は何もない。
彼女は【ビターなナイフ】を心臓にしまった。
僕は手の中のヨーヨーを見た。
「僕は一体何者なのだろう」
「さぁな。だがこの世に平凡な
人間なんか一人もいやしない。
自分は弱者だと思いこんだ傲慢な人間と
自分は強者だと思いこんだ自惚れ屋が
いるだけなんじゃないか」
彼女はそういうと教室を去った。
僕はその彼女の後ろ姿をいつまでも見送った。
隣の席の彼女は鋭い刃物
彼女は心臓にナイフを
握りしめている
了
善き事がありますように。
お読みいただきありがとうございました。
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