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後編SS230630  絶体絶命!!18「恋路(こいみち)竹林」 

後編SS230630  絶体絶命!!18「恋路(こいみち)竹林」 ・・・💖


「かたじけない。
我らは東の遠国から参った者で
姫様の『お輿入れ』に向かう途中で・・・」

Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン

俺の頭が何かで撃ち抜かれた。

その後、何があったのかは覚えていない。

ただ峠を越えて安宿に着いた時、
女魔法使いと若いシーフが
ほくほく顔で酒を飲んでいたところで
意識が戻った。

「なんかおかしいと思ったのよねぇ。
道ながら『姫、姫』てぶつぶつつぶやきながら
ぐすぐす泣いて歩いていたから」

酒でほんのり顔が赤くなる女魔法使い。

「仕方ないだろ。出会って瞬殺で恋に破れたんだから。
そりゃそうだ。あんなところ普通の深窓の姫君だったら
うろついてないって。
それも輿入れだったら納得がいくよな」

そう言って、ケラケラ笑う若いシーフ。

「・・・・ぐす」

「あああ、分ったわよ。
失恋して辛いのが分かるからこうして慰めてんでしょ。
この近くに教会じゃなくて寺院って言うんだけど
そこに『恋路(こいみち)竹林』っていうのが
あるんだって」

「そう言えば、観光パンフに書いてあったよな。
何々。元は寺院の通りの道の両脇に見事な竹林があって
その素晴らしさから人が集まり、
いつ頃から観光客が集まりだしたんだけど」

「そう。そこで問題になったのが『相合傘の落書き』よ。
品位が落ちると地元の人達にブーイングが起きたんだけど
そこの寺院の高僧はさすがね」

「なんと落ちると土に還るミーカ紙をよじってひも状にした
こよりというのに笹の葉二枚を通して
そこに恋人同士の名前を書かせて
竹に書かれた相合傘を隠す様にさせたのよね」

「そうそう。それもちゃんと恋愛成就の加持祈祷を行って
しかも竹に書かれた恋人同士も成就するように
祈祷をなさったんですとさ」

「それに地元の困っている人達にお金を払って
その笹の葉ええっと、『笹恋紙(さされんし)』ていうのを
作らせて助けているのでもう、ここの人気うなぎ登りよ。
しかも笹恋紙で竹に書かれた相合傘を隠すだけで
善行を積むことになるらしくって余計に人気がでたのよね」

俺はそれを聞いて立ち上がった。
すると

「剣士ちょっと待ったぁ。
あんたどこ行くつもりよ。
大体その『恋路(こいみち)竹林』の場所
知らないでしょ」

「そうそう。落ち着けドウドウ。
それにさぁお姫様は国と国を結びつける
いわば外交官の役割がある訳で
惚れた腫れたで動ける立場じゃないしさぁ。
ああ、一周回って泣いてるよぉ」

「剣士。あんたそんなにあのお姫様に一目ぼれしたのねぇ。
えーとこの観光パンフに寄ると
来世で恋人になれる笹恋紙もあるみたい。
来世かぁ。さすが東国、発想が違うわぁ。
だから!落ち着けっ」

「とにかくもう寺院も閉まっているしさぁ。
明日連れていくから。
それに笹恋紙は、あんまり作ると今度は
逆にそれが景観を悪くするからって毎日数量限定・・・
夜から並ぶの厳禁だから!
今日のところはかんべんな、剣士ちゃん」

そして翌日。
俺は二人に連れられ恋路(こいみち)竹林へと向かった。
そして側の寺院で笹恋紙を買って
自分の名前を書き、姫の名前を書こうとして・・・

「ねぇ、そう言えばお姫様の名前教えてもらわなかったよね」

女魔法使いが震える声でそう言った。

「そうだ!剣士。『お姫様』と書いて似顔絵を描いたらどうだい。
大体お姫様の顔を見たの剣士だけだしさ」

フォローする若いシーフ。
俺は彼に言われるまま、震える手で『お姫様』と書き似顔絵を描いた。

ぐす・・・・
神様そして東国の神様、どうかたまには俺の願いを叶えて下さいと
祈りながら。



善き事がありますように。
お読みいただきありがとうございました。
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前編SS230623  絶体絶命!!18「恋路(こいみち)竹林」 

前編SS230623  絶体絶命!!18「恋路(こいみち)竹林」 ・・・💖


ぐす、ぐす・・・・

「ちょっとぉ、いつまで泣いているのよぉ」

そう苛立って言うのは
パーティを組んでいる女魔法使い。

「そうそう。いつまでも嘆いていいないで
こんな安宿のじゃなくて破格の親切清潔明朗会計の宿の
おいしーい酒を堪能して忘れちまおーぜ、な?剣士」

俺がいつまでも泣いているので
うんざりしながらそれでも慰めるのは
同じくパーティーの若いシーフ、盗賊だ。

「わ、分かってはいるんだ。
お、俺なんかと釣り合わないし
万に一つも可能性が無い位・・・ぐす」

「あああ!いやっ
酒が湿っぽくてカビが生えてくるぅ
あらやだ宿屋のご主人
気のせい気のせい気のせいだったわぁ」

ドンっ 女魔法使いが酒の入っグラスを
テーブルに置く。

「と・に・か・く忘れてよね。
ていうか忘れろ。酒が不味くなるから!」

「そうそう。女に告る機会もなく
あっさり振られたのは仕方ねぇよ、だって相手は」

「「お姫様だったんだから」」

二人の声が揃った瞬間だった。

そう。それは数日前のこと。
俺達は険しい山道を登り、
この東国へと旅をしてた。

崖を削ってできたような道で、
それでも小型の馬車位はなんとか通れるようだが
怖いので断って徒歩で歩いてきたのだ。

そして峠にさしかかった時。
前方から悲鳴と怒号が聞こえてきた。

「シーフ、援護するから偵察に行ってきて」

女魔法使いがそう言うと

「りょーかーい」

と、若いシーフはサササと音もせずに
現場へと近づいた。
そして、崖にへばりついて隠れながら
偵察を行った。

しかし、すぐに来いとのサインが出たので
俺達も駆け足でシーフの側へと駆け寄る。

そこで見たのは、隊列が大型鳥獣型モンスター
ワシ―オに襲われている光景だった。
高い山に生息し、まともに向き合うと
太陽が隠れるほどの大きさだ。

そのワシ―オに対し、隊列を守っているのは
どこかの国の騎士たちだった。
紋章の旗を掲げ、異国の鎧を纏った彼らは
必死になって、弓矢を魔法をワシ―オに
放っているが、ワシ―オはそれを物ともせず
隊列に襲い掛かろうとしている。

いや、隊列の中の高級な馬車を狙っているのが
一目瞭然だった。

「えーい、それでもお前らブシかっ。
姫様をお守りするのだっ」

すると、馬車の一部がワシ―オによって壊されたのか
中が見える。
その中を見た時ー。

ズキューン!!!!!!!

俺の何かが撃ち抜かれた。

「ちょっと剣士!何呆然としているのよっ。
お姫様よお姫様っ。ここは一つ助けて
お礼をたんまりいただくチャンスよ」

「そうだそうだ!じゃなくて人助けして
謝礼に金貨の十枚や二十枚軽く貰えるぜ。
みろよ、あの連中の衣装の華やかの事。
たんまりいただけらぁ、て剣士?人の話聞いてるか?」

そう言ってシーフが俺の肩に手を乗せようとするのを
俺は払いのけた。

そしてギンっとワシ―オを睨みつけた。
俺の殺気に気付いたワシ―オ。

「ちょっと剣士!何してくさるのよっ。
こっちに注意を引き付けるんじゃないわよ!
て、飛んでるーぅうううう」

俺は聖剣エクスカリバーを抜きながら
一気に跳躍した。
そう、俺にとってワシ―オなぞ単なる『的』だ。

ザンッ

俺はワシ―オを真っ二つにエクスカリバーで
引き裂いた。

落下する俺。

その俺にシーフのロープが絡まり、
女魔法使いの魔法の見えないクッションで
受け止められ道へと引き寄せられた。

「ちょっと何このバカしてるのよっ。
助けられたからいいかもだけど
一歩間違ったらあの世行きよ!バカっ」

女魔法使いの罵倒が聞こえる。

その時、隊列の騎士の中から
一番偉そうな恰幅のいい人物が
やってきた。

彼は右手を地面につけ、
曲げた太ももに左手を置いて
頭を下げた。

「かたじけない。
我らは東の遠国から参った者で
姫様の『お輿入れ』に向かう途中で・・・」

Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン

俺の頭が何かで撃ち抜かれた。

その後、何があったのかは覚えていない。

続く



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SS230602絶体絶命!!17「人の話はよく聞きましょう」

SS230602絶体絶命!!17「人の話はよく聞きましょう」・・・⚔


「うーん、昨日は久々に
清潔な町の宿屋に泊まれて
良かったわぁ」

そう言ったのはパーティーを
組んでいる女魔法使い。

「ホーンと。
小ざっぱりして気持ちのいいベッドに
サービス満点な朝食が良かったぜ」

道の傍らの草を千切って
口笛よろしく遊んでいた、これも
仲間の若いシーフ。

そういう俺は剣士で、
この二人とパーティーを組んで
各地の冒険者ギルドの依頼を受けて旅をしている。

「それにしても最大の難点は
治安が良すぎて冒険者ギルドの依頼が
ちーんまりしたのしか無かったのが
問題だったわねぇ。あの町」

「そうなんだよねぇ。
今は懐もあたたかいし
さすがに冒険者なりたての
お子ちゃまがする
町はずれの薬草採りじゃぁねぇ」

「そうそう、ちょっとする気になれないわね」

俺はそんな二人のやりとりを
口の端をあげて聞いていた。

ぽかぽかと気持ちのいい陽射しを浴びて
次の村へと歩くのはそうでなくとも
人の心を明るくさせる。

するとそんな平和な時間を
打ち破る声が聞こえてきた。

「大変だぁ大変だぁ」

「なんだなんだ。
あ、あれは教会の人間だな」

目のいいシーフがそうつぶやく。

「とりあえず、急ぎましょ。
モンスターが出現したのかもしれないわ」

そう言ってダッシュしたのは女魔法使い。
俺もシーフも後に続く。

「あら、あの服装は司祭見習いね。
ちょっとーストップストップぅ」

その声に一心に走ってきていた司祭見習いが
我々の前で止まった。

「ほらよ、まぁ水でも飲んで落ち着きな」

若いシーフが水の入った筒をさしだすと
司祭見習いはごくごくと水を飲んで
一息ついた。

「それでどうしたの?ん?」

女魔法使いが尋ねると、
司祭見習いが真っ赤になって
しどろもどろになりながらも
言うには

俺達が向かっていた村は
すぐ近くにあって、
その村はずれにある教会が
もうすぐ見えるとのこと。

その教会の壁には、
はるか昔の有名画家が描いた
聖者の絵があるのだが

「実は何百年も経って
絵が痛んできてしまったのです。
それで村で修復しようと
見積を出したのですが、
あまりにも高名な画家の絵の為
高額過ぎてとても直せないという
ことになりました」

「へぇ、それは大変だな」

若いシーフが相槌を打つが
興味を失った声音だった。

すると司祭見習いは首を横に振って

「それならまだいいのです。
積立金をすればいいだけですから。
問題なのは・・・」

「もんだいなのは?」

おんな魔法使いが小首を傾げて
続きを促す。

「村のおばあちゃんが、
高名な画家の絵の上に
全く似てない絵を描いてしまったのです!」

しーん・・・
俺達三人は絶句した。

司祭見習いさんはおいおい泣き出して

「あの絵は、知る人ぞ知る絵なので
あの絵を目当てに画家さんが模写をして
小額ながらも献金をされて
教会の運営にも貢献してくださる
ありがたい絵だったのに・・・」

「ま、まぁとりあえず教会に行ってみましょうよ」

いたたまれなくなった女魔法使いが
現状打破の為か、俺達にそう提案した。

司祭見習いさんは、袖で涙を拭いて

「とりあえず、私は町の教会に相談に
伺います」

と言った。

「おう、俺達は村の教会に行ってみるよ。
この一本道を行けばいいのだな」

司祭見習いは小さくうなずくと
町へと走り去っていった。

そして俺達三人も村の教会へと走りだした。

教会が見えて、その中に入ると
中央の祭壇左側の壁の側に
うずくまっている人がいた。
装束から判断して司祭のようだ。

俺達はアイコンタクトをして
そっと、司祭の側に近づいた。
すると、司祭が俺達の気配に気付いたのだろう。

よろよろと立ち上がると、

「ようこそこの村へ。
なにか御用はおありでしょうか」

と、沈んだ声で言った。

「あ、あの先程司祭見習いさんにあって」

おんな魔法使いがしおらしく言うと

「ああ、ではこの絵のことで
来られたのですね」

そう言って見せてもらった絵は

「う!これ人間じゃねぇよな。
けむくじゃらのモンスタールーサに
そっくりだぜ」

若いシーフが言うと

「そ、そんなことないわよ。前衛的よねぇ、
剣士」

女魔法使いに促されて、
俺はとりあえずコクコク頷いた。

司祭様は俺達に羊皮紙を広げると

「実際に描かれていた絵は
このようなものでした。
数十年前、模写をした若い画家が
奉納していったものです」

そこには美麗な中にも威厳溢れる
聖者の絵が描かれていた。

うわぁ。村のおばあちゃん、やっちまったな。
俺達三人は無言で事態を察した。
すると女魔法使いが

「そうだわ!これ、呪文タッカーではぎとればいいのよ。
剣士、聖剣エクスカリバーを出してちょうだい」

俺は疑問に思いながらも
聖剣エクスカリバーを女剣士の前に差し出した。

「いい?剣士。その剣に呪文タッカーをかけるから
村のおばあちゃんの描いた絵の具の部分だけ
はぎとってちょうだい。
間違っても、高名な画家が描いた部分をはぎとるんじゃ
ないわよ」

そんな難しいことをと言おうとする間も与えずに
おんな魔法使いは呪文を唱えて

「今よっ」

と叫んだ。
その言葉に反射的に反応した俺は

ザンッ

と、村のおばあちゃんが描いた絵の部分を
切りはがしていた。

「おお~Σ(・□・;)」

周りにいた全員が驚きの声を上げた。
そう、俺は高名な画家の描いた絵には
少しも触れずに、
おばあちゃんの描いた部分だけを
はぎとったのだ。

その時、

「あ、あんたらは何をしてくれるんじゃぁ」

振り向くと、入り口のところに
老婆が一人立っていた。

「あれが、あの絵を描いた村のおばあちゃんです」

司祭が小声で俺達に教えてくれた。
すると村のおばあちゃんが

「あ、あんたら。あの教会に描かれていた元の絵は
この教会の下に眠っているモンスターモグーラを封じるために
描かれていたのじゃ。
だが時代が経つにつれ絵が薄れ効力が落ちていた。
そこで神様が夢枕に立って、
あたしに絵を描くようお命じになったのじゃ」

「はいはい、おばあちゃん。
家に送りますから。その前に教会で
温かいスープとパンでも食べて・・・」

と言った瞬間。
グラグラと教会が揺れた。

「ちょっ、ちょっと今透視してみたけれど
このおばあちゃんのいう事は本当よ!
確かにこの教会の下にモンスターモグーラが
いるわっ。それもとても大きいのがっ」

そう女魔法使いが叫んだ瞬間!

モグーラが教会の俺達がいる反対側に
その姿を現わした。
もちろん、教会の半分は木っ端みじん。

「こ、こんなのどうすればいいんだよっ」

若いシーフが叫んだ。
すると女魔法使いが村のおばあちゃんが描いた絵を
掴んで、

「この絵をモグーラの額に貼り付けるのよ!」

と言って、若いシーフに渡した。
するとそれまで黙っていた俺は

「いや、この程度のモンスターならば俺一人で十分だ。
実際今も睨み合っていて奴は一歩も動けないようにしている。
倒すぞ」

俺は、そう言うと聖剣エクスカリバーを構えて
タンっと跳躍した。

後ろで村のおばあちゃんが何かを叫んでいたような
気がするが、気のせいだろう。
そんなことを思いながら大きく聖剣エクスカリバーを
ふりかぶって、モンスターモグーラを一刀両断した。
どどうっと倒れるモンスターモグーラ。

それを後ろに着地する俺。
これで後は女魔法使いが粉塵の呪文で
モグーラを土に返せば完璧だ。

多少の犠牲は
パンっ
俺は頬を打たれた。
そこには怒っている女魔法使いがいた。
そして

「い~い?
モンスターモグーラはねぇ。
確かに動き回れると地震を起こすは
地面がぼこぼこになるわ迷惑な存在なの。
だけどねぇ。
眠っている状態だと
土にいい波動の息を出して
農地を豊かにするのよ。
ど~し~てくれるのよぉ!」

・・・どうしようもできない・・・。

仕方なく、おんな魔法使いが
小さなモンスターモグーラを数十匹
呪文で呼び集めて眠らせて
土に埋めた。
その上に石を置いて、
村のおばあちゃんが描いた
モンスタールーサに似た絵を
貼り付けた。

その後、近隣の町や村の人々が
やってきて、高名な画家の描いた絵と
村のおばあちゃんが描いた絵を
観光で見に来ることになり、
教会の修繕費は勘弁してもらえた。

・・・・・・・・・・
「ああっもう。
あともう少しで大儲けできたのにぃ」

昼下がりの眠たくなるような陽射しの中。
女魔法使いの絶叫が響いた。

ジト目で俺を見る若いシーフの視線が痛い。

結局俺はパーティーを追い出された。
無念だ。
でかい獲物が現れば倒したくなるのが
剣士の習性。
トボトボと歩く俺。

そんな俺に声をかける者がいた。

「ねぇ、あんた剣士?
良かったらあたしたちとパーティー組まない?」




善き事がありますように。
お読みいただきありがとうございました。
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テーマ : オリジナル小説
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SS230428体絶命!!16『説明書はよく読んで』

SS230428体絶命!!16『説明書はよく読んで』・・・⚔


「ふわぁ 眠い・・・」

そう言ったのはパーティーを組んでいる女魔法使い。

「ホーンと。春のお日様がぽかぽかして
眠っていてぇなぁ」

そうして大あくびをしたのはこれも
仲間の若いシーフ。

俺は剣士でこの二人とパーティーを組んで
各地の冒険者ギルドの依頼を受けて旅をしている。

「二人とも、あともう少しで町につく。
宿をとってそこで眠ったらいいじゃないか。
俺は冒険社ギルドに行って何か良い
依頼がないか探してみる」

すると女魔法使いが

「そうね。町から手近なところで
楽そうな薬草採集位にしてくれない?
懐はけっこうあたたかいから
当分は簡単な依頼にしましょ」

と言うと

「そうだな。おいらもここ数日は
惰眠を貪りたいから同じく一票だぜ」

とシーフもふわぁとあくびをして伸びをした。

「了解した。その線で探してくる」

そういうやり取りをしているうちに
町に到着した。
手近な安宿だがこざっぱりとしているので
二人とも満足して、
女魔法使いだけは一人部屋で
俺とシーフは相部屋で泊まることにした。

二人がふかふかのベッドにダイブして
寝入ってしまった。

俺はしょうがないなと思いつつも
夕飯頃には起こしてやろうと考えながら
宿を出て、宿の女将から聞いた
冒険者ギルドへと足を運んだ。

ギルドへ入るとすぐに依頼のボードへと向かう。

(お、これなんか良さそうだな)

俺は依頼のメモを持って受付のカウンターへ向かった。
カウンターには笑顔の可愛い受付の女性が待っていた。

「いらっしゃいませ。メモをお渡し願えますでしょうか。
ハイ、ありがとうございます。
えーと、世界一大きくて悪臭でハエをおびき寄せて
受粉活動をさせる『ラフレーシャン』の駆除ですね。
では冒険者カードの提示をお願いいたします」

お、おう。一気にしゃべり終えた受付の女性に
圧倒された俺は、冒険者カードをカウンターの上に出した。
すると、俺のカードを見た受付の女性が一瞬固まった。

「あ、気にしないでほしい。
今は休暇中でリフレッシュするだけなんだ」

「そ、そうですか。お客様ほどのレベルになれば
どんな依頼も受けられますのに残念です。
あ、すいません余計なおしゃべりをしまして。
はい、では依頼の受理をいたしましたので
説明書をよくお読みになって依頼をこなされますよう
宜しくお願いいたします」


俺は、黙ってうなずくと
カウンターから速攻離れた。

・・・・・・・

「で、何でこんな依頼を受けたのよ」

不愉快そうな声を出す女魔法使い。

「いや、簡単な依頼だと思ったからだ」

俺がそう答えると

「確かに簡単でしょうよ。
だけど、この悪臭で名高いラフレーシャンの駆除
なんて受けないでよ。
しかも、このラフレーシャンが今年は
咲きすぎていて、
美味な水をその身に蓄えている宿主の『美味葛』が
弱っているから駆除してほしいなんて
例年より悪臭が酷いから
誰も依頼を受けなかったんでしょ!」

「そ、そうか。それは気付かなかった。
俺は修行と試練と鍛錬のおかげで
こういう事態も慣れていた物だから・・・」

「まぁまぁ。二人とも。
依頼を受けちまったのは仕方がない。
とにかくとっとと片付けて帰ろうぜ。
早くしないと、服や身体に臭いが移って
宿屋に宿泊拒否されちまう」

もう一人のパーティーのメンバーの
シーフがそうとりなしたので
女魔法使いもしぶしぶ依頼を片付けるため
依頼の説明書を読み始めた。
そして

「とにかくラフレーシャンを
宿主から無くせばいいんでしょ。
剣士、聖剣エクスカリバー出しなさいよ。
それに、対象をちり芥にする魔法を
かけるからそれでラフレーシャンを
切ってきてちょーだい」

俺は頷いて、聖剣エクスカリバーを出した。
そこに女魔法使いが、魔法をかけた。

「それではミッション『ラフレーシャン駆除』
を実行してくる」

俺はそう言うと、武術「疾走」を使い、
目に物止まらぬ速さでラフレーシャンを
切って行った。
その後ろで、パーティーの若いシーフの
声が微かに耳をかすめたが、
任務中の俺の耳には届かなかった。

・・・・・
そして小一時間が経った。

「任務、完了」

俺はそうつぶやくと、
聖剣エクスカリバーをしまうと
パーティーの二人の元へと戻った。


なんか二人の様子がおかしい。

「今、戻ったが」

俺がそう声をかけると
説明書を握りしめた若いシーフが

「なぁ、ラフレーシャン全部
ヤッチャッタ?」

「もちろん。全て駆除した」

すると項垂れた女魔法使いが

「実はね。説明書に続きがあってね。
宿主の「美味葛」はね。
ラフレーシャンに余分な水や栄養を
吸い取ってもらうことで
美味しい水ができるんですって」

と言った。

「というと?」

「ラフレーシャンが無くなった
美味葛は、超不味い水を
内部に作るんだと!」

若いシーフが絶叫した。

「しかもこの美味葛って
この町の名産品なのよ!!」

「・・・・・」

俺達は何も言わずに逃げ出した。
そして俺はパーティーを追い出された。

俺は下を向いてトボトボと街道を歩く。
そんな俺に声をかける者がいた。

「ねぇ、あんた剣士?
良かったらあたしたちとパーティー組まない?」





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ss230331絶体絶命!!15『街角対戦曲』

SS230331 絶体絶命15『街角対戦曲』・・・⚔


「(*´Д`)大した依頼の無い町ねぇ」

そう言ったのはパーティーを組んでいる女魔法使い。

「ホーンと。おいらの腕が鳴る宝箱の詰まった
ダンジョン一つないとは」

いって大あくびをしたのはこれも
仲間の若いシーフ。

俺は剣士でこの二人とパーティーを組んで
各地の冒険者ギルドの依頼を受けて旅をしている。

だが、立ち寄った町はあまりにも平和過ぎた。
町の冒険者ギルドも暇なのか
依頼の貼ってあるボードは隅の壁に追いやられ、
美味しそうなランチやディナーを提供する方が
メインになっている。

「そんなこと言われてもしょうがないじゃない。
この町って城主様が有能そのもので平和なのよ。
だから受付の私もウエィトレスをやって
チップを稼いでいるのよ!」

そう言って腰に手を当てて文句を言った
ウエィトレスもとい受付嬢の女性。

「ほら、どうせ仕事なんかないんだから
お昼の定食でも食べて言ったら。
注文が決まったら呼んでちょうだい。
あ、三番席のお客様ぁ注文うかがいまーす」

俺達三人は顔を見合わせてため息をついた。
そしてとりあえず開いた席に座って
メニュー表をみようとしたその時。

「大変だ!『新』魔王が現れたっ
誰か戦える奴はいないか。
いたら広場まで来てくれ。
倒せば礼は弾むぞっ」

そう叫んだのはあちこち傷を追った
どうやら城の兵士のようだ。

俺達三人は即座に席を立って
彼に広場までの案内を頼んだ。
俺達の他について来る者はいなかった。

町の広場についた。
そこには兵士たちが傷ついて倒れていた。

そして町の真中に一人の男が立っていた。
お羊の角、長い黒髪に真紅の目
禍々しいオーラをだして
マントをひるがえして言った。

「さぁ、我は新魔王である。
我は退屈して折る。
誰か我と闘う者はいないのか。
これ以上つまらぬ時が過ぎるのなら
この町を・・・」

俺は叫んだ。
「待て!この俺が相手だっ」

すると魔王はにたりと笑い、

「ほう。その纏っている気から察するに
そなた勇者だな。
相手に不足はない」

そこで魔王は何を考えついたのか
くくくと笑って、

「普通の戦闘では面白くない。
ここは芸術で戦おう。
我はピアノを弾こうではないか」

「いいだろう。では俺はバイオリンで戦う」
俺は応えた。

「ちょっと、あんた音痴じゃない。
大体バイオリンなんか弾けるの?」

そう言ったのは女魔法使い。

「そんなことより早く耳栓をしろ。
おいらはこいつの歌声にこりているんだ」

仲間の若いシーフがどこから出したのか
耳栓を必死の形相で耳につめていた。

俺はそんな二人には構わず、
手から聖剣エクスカリバーを出した。
そして女魔法使いに聖剣をバイオリンに
変える魔法をかけさせた。

「用意はできたかの?それでは
我のピアノの音色とくと聴けいっ」

そう言ってピアノを引き出した魔王。

「くっこれは『絶対恐怖曲』!!」

俺は聖剣エクスカリバーを変じたバイオリンを
握りしめて声を絞り出した。

そう、この曲は不遇な音楽家が
そのねじ曲がった暗い感情を
楽譜にぶつけて書き上げたという代物だった。
魔王はその妖艶な笑みを浮かべて
楽し気に曲を弾きこなす。

破綻した和音の連続音の間に
流れるように鍵盤に指を走らせる際に
微妙にとなりの鍵盤をタッチして
二重の不協和音を奏で、
ペダルの強弱を足しげく踏み
脳が上下に絞り出されるような音の連続・・・

人々は必死の形相で逃げ出し
動けぬものは泡を吹いて倒れている。

俺は女魔法使いに言って
広場に結界を張るように言い、
耳栓をしているシーフに
動けぬ者達を広場の外に
運び出すよう言った。

そして、広場には新魔王とオレだけが残った。
新魔王は悦にいった表情で
ピアノを弾いている。

俺は聖剣エクスカリバー変じたバイオリンを
弾く体勢に構えた。

そして叫んだ。

「ビブラートマンドラゴラ奏法『絶対強者曲』!!」

「な、なにぃ『絶対強者曲』だとっ」

新魔王の顔色が変った。
そう、これは音楽を武器に戦った、とある
勇者の作った曲。
魔王を倒すために作られた至高の名曲。

「う、うがぁあ。やめてくれぇええ」

そう言われても俺は止める気は無かった。
これから甚大な被害をもたらす存在に
情けをかけるなどもってのほか。
新魔王は身体をビクビクふるわせて
耳を塞いで絶命した。

・・・・
「正義は勝つ」

俺がそうつぶやいた時。

「普通に聖剣エクスカリバーでたおさんかーい」

ごちんと俺を杖で殴ったのは
女魔法使い。
そういう彼女は何故かげっそりした顔をしていた。
そして

「あんたねぇ。なんて曲を弾いてくれるのよっ。
新魔王の弾く音はあたしの結界をこえなかったけれど、
あんたのは結界の外にまで聴こえて
町の人々を恐怖と絶望の縁に追い込んだのよ。
今、司祭様達が必死でヒーリングをかけている状態よ!」

「うう、それにお前のせいで町の建物が壊れて
礼金払えないって言われてしまったんだぞぉ」

若いシーフが恨めしそうに俺に愚痴った。

「しかし、新魔王が音楽で対戦することを望んだから」


「「だからって、するんじゃない!!」」

俺達は、町の人達にみつからないようこそこそと
逃げることにした。

・・・・・・・・・
俺はパーティーから追い出された。
一体何がいけなかったのか。
新魔王程の敵を倒す以上、
被害がでるのは仕方がない事だったのだが・・・。

そう落ち込んでいると
俺に声をかける者がいた。

「ねぇ、あんた剣士?
良かったらあたしたちとパーティー組まない?」





善き事がありますように。
お読みいただきありがとうございました。
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のぞいて頂ければ望外な喜びです。
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