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SS230428体絶命!!16『説明書はよく読んで』

SS230428体絶命!!16『説明書はよく読んで』・・・⚔


「ふわぁ 眠い・・・」

そう言ったのはパーティーを組んでいる女魔法使い。

「ホーンと。春のお日様がぽかぽかして
眠っていてぇなぁ」

そうして大あくびをしたのはこれも
仲間の若いシーフ。

俺は剣士でこの二人とパーティーを組んで
各地の冒険者ギルドの依頼を受けて旅をしている。

「二人とも、あともう少しで町につく。
宿をとってそこで眠ったらいいじゃないか。
俺は冒険社ギルドに行って何か良い
依頼がないか探してみる」

すると女魔法使いが

「そうね。町から手近なところで
楽そうな薬草採集位にしてくれない?
懐はけっこうあたたかいから
当分は簡単な依頼にしましょ」

と言うと

「そうだな。おいらもここ数日は
惰眠を貪りたいから同じく一票だぜ」

とシーフもふわぁとあくびをして伸びをした。

「了解した。その線で探してくる」

そういうやり取りをしているうちに
町に到着した。
手近な安宿だがこざっぱりとしているので
二人とも満足して、
女魔法使いだけは一人部屋で
俺とシーフは相部屋で泊まることにした。

二人がふかふかのベッドにダイブして
寝入ってしまった。

俺はしょうがないなと思いつつも
夕飯頃には起こしてやろうと考えながら
宿を出て、宿の女将から聞いた
冒険者ギルドへと足を運んだ。

ギルドへ入るとすぐに依頼のボードへと向かう。

(お、これなんか良さそうだな)

俺は依頼のメモを持って受付のカウンターへ向かった。
カウンターには笑顔の可愛い受付の女性が待っていた。

「いらっしゃいませ。メモをお渡し願えますでしょうか。
ハイ、ありがとうございます。
えーと、世界一大きくて悪臭でハエをおびき寄せて
受粉活動をさせる『ラフレーシャン』の駆除ですね。
では冒険者カードの提示をお願いいたします」

お、おう。一気にしゃべり終えた受付の女性に
圧倒された俺は、冒険者カードをカウンターの上に出した。
すると、俺のカードを見た受付の女性が一瞬固まった。

「あ、気にしないでほしい。
今は休暇中でリフレッシュするだけなんだ」

「そ、そうですか。お客様ほどのレベルになれば
どんな依頼も受けられますのに残念です。
あ、すいません余計なおしゃべりをしまして。
はい、では依頼の受理をいたしましたので
説明書をよくお読みになって依頼をこなされますよう
宜しくお願いいたします」


俺は、黙ってうなずくと
カウンターから速攻離れた。

・・・・・・・

「で、何でこんな依頼を受けたのよ」

不愉快そうな声を出す女魔法使い。

「いや、簡単な依頼だと思ったからだ」

俺がそう答えると

「確かに簡単でしょうよ。
だけど、この悪臭で名高いラフレーシャンの駆除
なんて受けないでよ。
しかも、このラフレーシャンが今年は
咲きすぎていて、
美味な水をその身に蓄えている宿主の『美味葛』が
弱っているから駆除してほしいなんて
例年より悪臭が酷いから
誰も依頼を受けなかったんでしょ!」

「そ、そうか。それは気付かなかった。
俺は修行と試練と鍛錬のおかげで
こういう事態も慣れていた物だから・・・」

「まぁまぁ。二人とも。
依頼を受けちまったのは仕方がない。
とにかくとっとと片付けて帰ろうぜ。
早くしないと、服や身体に臭いが移って
宿屋に宿泊拒否されちまう」

もう一人のパーティーのメンバーの
シーフがそうとりなしたので
女魔法使いもしぶしぶ依頼を片付けるため
依頼の説明書を読み始めた。
そして

「とにかくラフレーシャンを
宿主から無くせばいいんでしょ。
剣士、聖剣エクスカリバー出しなさいよ。
それに、対象をちり芥にする魔法を
かけるからそれでラフレーシャンを
切ってきてちょーだい」

俺は頷いて、聖剣エクスカリバーを出した。
そこに女魔法使いが、魔法をかけた。

「それではミッション『ラフレーシャン駆除』
を実行してくる」

俺はそう言うと、武術「疾走」を使い、
目に物止まらぬ速さでラフレーシャンを
切って行った。
その後ろで、パーティーの若いシーフの
声が微かに耳をかすめたが、
任務中の俺の耳には届かなかった。

・・・・・
そして小一時間が経った。

「任務、完了」

俺はそうつぶやくと、
聖剣エクスカリバーをしまうと
パーティーの二人の元へと戻った。


なんか二人の様子がおかしい。

「今、戻ったが」

俺がそう声をかけると
説明書を握りしめた若いシーフが

「なぁ、ラフレーシャン全部
ヤッチャッタ?」

「もちろん。全て駆除した」

すると項垂れた女魔法使いが

「実はね。説明書に続きがあってね。
宿主の「美味葛」はね。
ラフレーシャンに余分な水や栄養を
吸い取ってもらうことで
美味しい水ができるんですって」

と言った。

「というと?」

「ラフレーシャンが無くなった
美味葛は、超不味い水を
内部に作るんだと!」

若いシーフが絶叫した。

「しかもこの美味葛って
この町の名産品なのよ!!」

「・・・・・」

俺達は何も言わずに逃げ出した。
そして俺はパーティーを追い出された。

俺は下を向いてトボトボと街道を歩く。
そんな俺に声をかける者がいた。

「ねぇ、あんた剣士?
良かったらあたしたちとパーティー組まない?」





善き事がありますように。
お読みいただきありがとうございました。
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ss230331絶体絶命!!15『街角対戦曲』

SS230331 絶体絶命15『街角対戦曲』・・・⚔


「(*´Д`)大した依頼の無い町ねぇ」

そう言ったのはパーティーを組んでいる女魔法使い。

「ホーンと。おいらの腕が鳴る宝箱の詰まった
ダンジョン一つないとは」

いって大あくびをしたのはこれも
仲間の若いシーフ。

俺は剣士でこの二人とパーティーを組んで
各地の冒険者ギルドの依頼を受けて旅をしている。

だが、立ち寄った町はあまりにも平和過ぎた。
町の冒険者ギルドも暇なのか
依頼の貼ってあるボードは隅の壁に追いやられ、
美味しそうなランチやディナーを提供する方が
メインになっている。

「そんなこと言われてもしょうがないじゃない。
この町って城主様が有能そのもので平和なのよ。
だから受付の私もウエィトレスをやって
チップを稼いでいるのよ!」

そう言って腰に手を当てて文句を言った
ウエィトレスもとい受付嬢の女性。

「ほら、どうせ仕事なんかないんだから
お昼の定食でも食べて言ったら。
注文が決まったら呼んでちょうだい。
あ、三番席のお客様ぁ注文うかがいまーす」

俺達三人は顔を見合わせてため息をついた。
そしてとりあえず開いた席に座って
メニュー表をみようとしたその時。

「大変だ!『新』魔王が現れたっ
誰か戦える奴はいないか。
いたら広場まで来てくれ。
倒せば礼は弾むぞっ」

そう叫んだのはあちこち傷を追った
どうやら城の兵士のようだ。

俺達三人は即座に席を立って
彼に広場までの案内を頼んだ。
俺達の他について来る者はいなかった。

町の広場についた。
そこには兵士たちが傷ついて倒れていた。

そして町の真中に一人の男が立っていた。
お羊の角、長い黒髪に真紅の目
禍々しいオーラをだして
マントをひるがえして言った。

「さぁ、我は新魔王である。
我は退屈して折る。
誰か我と闘う者はいないのか。
これ以上つまらぬ時が過ぎるのなら
この町を・・・」

俺は叫んだ。
「待て!この俺が相手だっ」

すると魔王はにたりと笑い、

「ほう。その纏っている気から察するに
そなた勇者だな。
相手に不足はない」

そこで魔王は何を考えついたのか
くくくと笑って、

「普通の戦闘では面白くない。
ここは芸術で戦おう。
我はピアノを弾こうではないか」

「いいだろう。では俺はバイオリンで戦う」
俺は応えた。

「ちょっと、あんた音痴じゃない。
大体バイオリンなんか弾けるの?」

そう言ったのは女魔法使い。

「そんなことより早く耳栓をしろ。
おいらはこいつの歌声にこりているんだ」

仲間の若いシーフがどこから出したのか
耳栓を必死の形相で耳につめていた。

俺はそんな二人には構わず、
手から聖剣エクスカリバーを出した。
そして女魔法使いに聖剣をバイオリンに
変える魔法をかけさせた。

「用意はできたかの?それでは
我のピアノの音色とくと聴けいっ」

そう言ってピアノを引き出した魔王。

「くっこれは『絶対恐怖曲』!!」

俺は聖剣エクスカリバーを変じたバイオリンを
握りしめて声を絞り出した。

そう、この曲は不遇な音楽家が
そのねじ曲がった暗い感情を
楽譜にぶつけて書き上げたという代物だった。
魔王はその妖艶な笑みを浮かべて
楽し気に曲を弾きこなす。

破綻した和音の連続音の間に
流れるように鍵盤に指を走らせる際に
微妙にとなりの鍵盤をタッチして
二重の不協和音を奏で、
ペダルの強弱を足しげく踏み
脳が上下に絞り出されるような音の連続・・・

人々は必死の形相で逃げ出し
動けぬものは泡を吹いて倒れている。

俺は女魔法使いに言って
広場に結界を張るように言い、
耳栓をしているシーフに
動けぬ者達を広場の外に
運び出すよう言った。

そして、広場には新魔王とオレだけが残った。
新魔王は悦にいった表情で
ピアノを弾いている。

俺は聖剣エクスカリバー変じたバイオリンを
弾く体勢に構えた。

そして叫んだ。

「ビブラートマンドラゴラ奏法『絶対強者曲』!!」

「な、なにぃ『絶対強者曲』だとっ」

新魔王の顔色が変った。
そう、これは音楽を武器に戦った、とある
勇者の作った曲。
魔王を倒すために作られた至高の名曲。

「う、うがぁあ。やめてくれぇええ」

そう言われても俺は止める気は無かった。
これから甚大な被害をもたらす存在に
情けをかけるなどもってのほか。
新魔王は身体をビクビクふるわせて
耳を塞いで絶命した。

・・・・
「正義は勝つ」

俺がそうつぶやいた時。

「普通に聖剣エクスカリバーでたおさんかーい」

ごちんと俺を杖で殴ったのは
女魔法使い。
そういう彼女は何故かげっそりした顔をしていた。
そして

「あんたねぇ。なんて曲を弾いてくれるのよっ。
新魔王の弾く音はあたしの結界をこえなかったけれど、
あんたのは結界の外にまで聴こえて
町の人々を恐怖と絶望の縁に追い込んだのよ。
今、司祭様達が必死でヒーリングをかけている状態よ!」

「うう、それにお前のせいで町の建物が壊れて
礼金払えないって言われてしまったんだぞぉ」

若いシーフが恨めしそうに俺に愚痴った。

「しかし、新魔王が音楽で対戦することを望んだから」


「「だからって、するんじゃない!!」」

俺達は、町の人達にみつからないようこそこそと
逃げることにした。

・・・・・・・・・
俺はパーティーから追い出された。
一体何がいけなかったのか。
新魔王程の敵を倒す以上、
被害がでるのは仕方がない事だったのだが・・・。

そう落ち込んでいると
俺に声をかける者がいた。

「ねぇ、あんた剣士?
良かったらあたしたちとパーティー組まない?」





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お読みいただきありがとうございました。
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ss220805絶体絶命!!14『童話は時に残酷です』

ss220805絶体絶命!!14『童話は時に残酷です』 :


今は次の町へ行くまでの途中で
だだっ広い牧草地帯の道を
歩いて向かっている。
いるのは牛牛牛・・・のみ。
貧乏パーティーにとって馬車なぞ乗ることはできない。
うまく親切な人に拾ってもらえれば御の字だ。

「おーい、あんたら何こんなところを
歩いているんだ?」

後ろを振り返ると、
カウボーイハットを被った
中年の親父が馬を駆けさせて
こちらに向かってくる。
そして馬上から尋ねられた。

俺達は事情を説明し、
あわよくばこの親父が町まで
馬車を走らせてくれないかと
心の中で思った。

親父は馬を降りると、道沿いの柵に
馬をつないでこちらへやってきた。
そして

「そうかぁ。それは大変だなぁ。
歩いて町へ行かなくちゃいけなとはなぁ。
そうだ!あんたら冒険者だろ。
なんか牛の乳を今の倍出す魔法とか
しらねぇか?」

「「「!!!」」」

俺達三人は唐突な依頼に面食らった。
よくよく話を聞いてみると、
牛の一頭の値段が最近高騰しており
今の頭数をそろえるのが精一杯
なのだそうだ。
だが、今はミルクの値段があがっており
丁度今の二倍のミルクを町で売れば
結構な儲けになるそうだ。

「へへへ、それだったら
牛を今より大きくすれば
いいんじゃないですかねぇ」

若いシーフが揉み手をして
親父に提案をした。
すると親父が思案気に

「なるほどぉ。牛が大きくなれば
それだけ沢山ミルクが出ると
いうわけだな」

「そうです、そうです。
うちの魔法使いの魔法で
牛が大きくなるようにしますんで。
成功しましたら報酬を弾んで
下さいよ」

「ちょっと、勝手なこと言わないで・・・」

すると、欲に目のくらんだ若いシーフが
ギロリと女魔法使いを睨んで、
そしてにっこりさわやか笑顔で

「やってくれるよな♪」

と言った。
女魔法使いはしぶしぶ

「分ったわよ。やるから牝牛ちゃん達を
集めてちょうだい」

と言った。
すると親父は喜んで馬に乗り、
あっと言う間に牝牛たちを集めてきた。

「じゃぁ剣士。魔法をかけるから
聖剣エクスカリバー出してくれる?」

「ほう、その剣に名前をつけているのかぁ。
牛に名前をつけるのといっしょだなぁ」

俺はもう少しでのけぞるところを
なんとかこらえた。
若いシーフと女魔法使いは肩で笑っていた。

俺は、聖剣エクスカリバーを斜め下に構え、
女魔法使いが、牛を大きくする魔法、

「それではいきます!
牝牛ちゃん大きくなぁれ『グロー』っ」

と唱えると聖剣に魔法を纏わりつかせた。
俺は聖剣を牝牛たちに向かって振るった。
すると一陣の風が牝牛たちにかかった。

すると、牝牛たちはむくむくと大きくなり
象程の大きさになった。

「お、おおこれ程の大きさになったら
乳の量も半端ないなぁ」

親父もびっくりしながらも
大喜びした。

ところが、ここで大変な事が起きた。
象程も大きくなった牝牛たちが
根こそぎ牧草を食べ始め
広範囲な牧草地帯が土だらけに
なってしまったのだ。
それに、確かに牝牛達のミルクの量は
半端ないのだが、搾るのに人出が足りず
入れる容器も足りないという
問題が発生したのだ。
牝牛たちは早く乳を搾ってくれと
催促をする。

このままでは、ミルクの量が多すぎて
値崩れを起こすと
ついに根を上げた親父が
牝牛たちを小さくしてくれと言い出した。

女魔法使いがジト目で若いシーフを見る。
シーフは明後日の方向を見て口笛を吹く。
溜息をついて女魔法使いは、呪文を聖剣に
向かって唱えた。

「はぁ、それではいきます!
牝牛ちゃん小さくなぁれ『シュリンク』っ」

すると、今度は牝牛たちは
鼠ほどの大きさになってしまって、
全員呆然としてしまったのだった。
とりあえず、怒り心頭の親父の眼光に
俺と女魔法使いは、何度も
大きくなぁれ、小さくなぁれと
呪文を唱えて、剣を牝牛たちに振り
やっと程よい大きさになった時は
とっぷり夜になっていた。

俺と女魔法使いは疲労困憊した。

「まぁ色々ありましたけれど
ミルクの量がたくさん採れたのですから
お代を払っていただけませんかねぇ」

すると親父が

「この大きくなった牝牛たちが
牧草を食べつくしてしまったから
牧草の種を撒いてきたぁ。
後は魔法で、雨を降らして
牧草を生やしてくれかなぁ」

言い方はのんびりしているが
目は笑っていなかった。

「あたしのMPあと少しなのにぃ」

そういう女魔法使いを宥めながら、
女魔法使いはやけくそで

「雨よ降れ!『レイン』っ」

聖剣に呪文を纏わせた。
俺は天に向かって呪文を放った。
そして雨が降り牧草地帯は・・・
牧草のジャングルと化した。

とりあえず牛たちは食べているので
良かったことにしよう。

だが、報酬から余計に使った
牧草の種代を引かれた。

・・・・・・・・・

俺達は疲れた体を引きずるように
町へと向かった。
そして何故か

「大体剣士が牝牛たちの大きさを
調整できないのが悪かったのよ!」

と、いきなり切れた。
それに若いシーフも同調し、
俺はパーティーを追い出された。

解せぬ。
だがこれは事実だ。
俺は新たなパーティーを求めてさすらうのだった。



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SS220729絶体絶命!!13『よそ見運転事故の元』

SS220729絶体絶命!!13『よそ見運転事故の元』  :


「うわ~夏は船での川下りは最高ね♪」

そう言ってはしゃいでいるのは
女魔法使い。

「うひょうっ。すげーここ両岸が崖になっていて
スリル満点だぜ」

これは若いシーフ。

俺は剣士でこの二人とパーティーを組んで
各地の冒険者ギルドの依頼を受けて旅をしている。

「ハハハ、この程度で驚いていたら
命がいくつあっても足りやしない。
あんたら冒険者だろ?
これから行く町のその先に
本当に川幅の狭い難所があって
大きな岩が両岸にそれぞれ埋まっているので
怖いのなんのあったもんじゃねぇさ。
そうだ、確かあんたらが行く町の
冒険者ギルドにある依頼があるはずだから
受けてみたらどうだい?」

そう言ったのは、この船の船長だった。

「おう、なんか面白そうだな」

若いシーフがそう言えば

「そうね、私も賛成よ。次の町で
すぐ冒険者ギルドにレッツゴー!」

女魔法使いがノリノリに応える。
俺はどっちでもいいので黙って頷いた。

「ええ、実はこの川の難所は事故が多くて
困っているのですが、
さらに困っていることがあるのです」

意気揚々と冒険者ギルドに行った俺達に
受付嬢はそう言って話し始めた。

なんでもこの町の川の下流の難所は
デューレライというのだそうだ。
そこの町側の崖の上に
船乗りたちを歌声で誘惑して
船を難破させるという
そう、セイレーンという怪物が
(といっても、女の人魚の姿をしている
そうだが)
住み着いているのだそうだ。

「ということは、難所の上に
その激流の轟音をものともせずに
船乗りを誘惑して船を難破
させるってわけかい?」

若いシーフが尋ねると
受付嬢はうなずいて、

「もちろん対策として
船の乗船員は全員耳栓をして
歌を聞かないようにしているのですが。
まぁそのおかげで操船に集中して
難破船が逆に最近は減っているのですが、
興味本位にセイレーンに陸地側から
近づこうとする輩もいて
困っているんです」

「あっらぁ。だったらそのセイレーン
退治したら報酬がお高いんじゃないの?」

そう女魔法使いが言うと
受付嬢の示した報酬額は破格の値段だった。
すると、若いシーフと女魔法使いが
速攻やりますと言ったので俺はやれやれと思った。

町から川の難所デューレライは乗合馬車で
近くまで行くので、俺達三人は昼ご飯を食べて
偵察に行くことにした。

冒険者ギルドの受付嬢が
耳栓を支給してくれたので
デューレライ近くでそれを耳に装着した。

その前に若いシーフが
セイレーンは、歌に魅了の魔法チャームを
乗せているのではないかと推測。
そこでぎりぎりまでセイレーンに気付かれないように
近づいて、女魔法使いに観察させると
その通りだと親指を立てた。

ならば簡単だ。
セイレーンは俺達が近づいても気にもせず
歌っている。
近づけば近づく程歌の声量は大きくなり
耳栓の限界まで近づいたところで
女魔法使いのチャームを無効化する
幻滅の魔法ディスルーションを
剣士の俺の聖剣エクスカリバーに
かけさせる。
(女魔法使いは威力が低いが
その分、数多くの魔法を使える。
聖剣はその魔法の力を増幅できる)

俺はセイレーンに向かって、
聖剣エクスカリバーを
思いっきり縦に振った。

すると、聖剣から強力な
幻滅の魔法ディスルーションが
セイレーンにぶつかった。
セイレーンも何か異常を感じ取ったようだ。
戸惑っている。
女魔法使いが、また親指を立てる。
作戦が成功した合図だ。

だが、まだもう一つの魔法をかける必要がある。
それは、デューレライの急流の轟音にも
負けない声量を止めなければならない。
セイレーンが取り乱し始めている。

女魔法使いがサイレントの魔法を
聖剣にかけようと呪文を唱えた時、
セイレーンが

「(# ゚Д゚)ーーーーーーーーっ」

対岸の大岩に向って大音響を発した。
岩はその音に耐えられずに
どーんと川に落ちて行った。

俺は急いでサイレントのかかった
聖剣をセイレーンにかけ、
崖に近寄り川を見た。
川はデューレライの狭い難所に
砕けた岩がダムのようになっていた。
そして川が逆流し始めていた。

「大変!町が危ないっ」

女魔法使いが叫ぶのと
俺が聖剣エクスカリバーを
川にある大岩を砕くのに振るうのと
同時だった。

その後、俺達は急いで町へと戻った。
町は水に浸ったがすぐに引いたおかげで
被害は少なかった。
だが、普段そんな被害にあったことの
無い人達は呆然としているのだった。

俺達は取り敢えず冒険者ギルドへと向かい
事の次第を報告した。
そしてセイレーンに
チャームを低めて美しい小鳥の様に歌える魔法、
『小鳥の歌』をかけたので、
あそこを観光地化することを提案し、
報酬は町への見舞金とすることをギルドの受付嬢に伝えた。

・・・・・・・・・・

「あ~あ、今回もただ働きかぁ」

女魔法使いが嫌味たらしく言うと
若いシーフも

「あれだけ働いて、骨折り損のくたびれ儲かよ」

とぶつぶつ言っている。
すると女魔法使いが

「そもそも剣士が大岩が落ちる寸前に
聖剣振るっていればなんの問題
なかったのよ。
そうよ、剣士が悪いのよっ」

若いシーフもジト目で俺を見る。

その後俺はパーティーを追い出された。
解せぬ。
だがこれは事実だ。
俺は新たなパーティーを求めてさすらうのだった。


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SS220715絶体絶命!!12『欲張りは大損の元』

SS220715絶体絶命!!12『欲張りは大損の元』 :


「い、いやぁあぁああああああああ」

この悲鳴は女魔法使い。

「うぎゃぁあああああ、なんでなんだよぉ
なんでこんなモンスターがいるんだよぉ」

これはうるさい若いシーフの絶叫。

そして俺は聖剣エクスカリバーを持つ剣士だ。

俺達パーティーは絶体絶命のピンチにある。
今からさかのぼること数時間前。


「うわぁ、潮風が気持ちいい」

いつも文句ばかり言う女魔法使いが、
かもめの飛ぶ海を見ながら目をキラキラさせていた。
そう、俺達パーティーはとある港町に来ていた。

「あーあ、こんなひなびた場所に
ロクな依頼なんかあるわけないぜ」

そんなひねくれたことをブツブツ言っているのは
若いシーフ。

そして俺は剣士だ。
季節は夏。海を照り返す光が眩しいが
それが夏を味わわせてくれて何となく
気分が高揚する。

「そこの三人組さんよぉ。冒険者かい?」

振り向くとそこにはガタイのいい
赤いバンダナを巻いた筋肉隆々とした
中年男性が立っていた。

「おっと、すまんすまん。ケンカを売ろうと
いう訳じゃないんだ。
オレはこの町の冒険者ギルドマスターなんだ。
立ち話もなんだから、冒険者ギルドで
話を聞いてくんねーかな」

俺達三人は顔を見合わせた。

「いいんじゃねーの。どうせ冒険者ギルドで
依頼を受ける予定だったんだから。
その代わり、報奨金は弾んでくれよな」

若いシーフの一言で俺達二人も頷いた。
ギルドは他の建物同様外壁が白で
統一され、中はバーも兼ねているようだ。

「これは俺のおごりだ」

麦酒がジョッキに入ったのが三つ
俺達の前におかれる。
そしてギルドマスターの依頼の話とは
この町の小高い丘の上から小さな川が
流れているのだが、その水をもたらしているのは
不思議な大きな木から枝々を伝って水が放出されて
流れとなっているというものだった。

「まぁ、その水があるから
こんな小さな港町も水に困らない訳だ」

「ふぅん。それで何が問題なの?」

女魔法使いがギルドマスターに尋ねる。

「日照りだ」

ギルドマスターが言うには
不思議な木から水が流れる量は
変らないのだが、日照りで川の水が
蒸発して量が少なくなっているという。
この辺りは農業も行っているので
水の量が不足がちだというのだ。

「それでどうすればいいんだい」

若いシーフがグビグビとビールを
飲んだ後、ギルドマスターに問う。

「実は、不思議な木の下に
水がたんまりあるのは分かっているんだ。
ただ、その水は変な分厚い膜に覆われていて
どんな剣も槍も貫けないんだ」

ふんふんと頷く俺達。

「ただ不思議な木はその表面の水分を
根で吸い上げているのは分かっている。
そこでだ、剣士さん。
あんた聖剣エクスカリバーを持っているだろう」
「よく分かったな」

「ああ、以前あんたが聖剣を抜く前に
聖剣が突き刺さっていた聖堂で
見たことがあるからな」

「そうか。確かにオレの持っているのは
聖剣エクスカリバーだ。
報酬が折り合えば土木工事だって
聖剣にさせるのが俺だ」

「おいおい、天下の名剣をシャベルや鍬と
一緒にしないでくれよな」

「関係無い。それでいくらだ」

ギルドマスターの提示した金額に
女魔法使いと若いシーフは
狂喜乱舞した。

このことはあっと言う間に町中に
話が広まった。
元々小さい町だ。俺達の後に
物見遊山で町中の人達がついてきた。
なんか町長とか町の役場の人間まで
やってきて、俺達を激励した。

だが、ただ一人。この町に住む
偏屈な賢者だけが反対した。
だが、町の若い衆にあっと言う間に
連れ去られていったので
俺達は気に留めることもなく
不思議な木の下に着いた。

その近くに井戸枠があったので
その中にある膜を破れば
いいとのことだった。

「いくわよ」

と女魔法使いが一声かけて風魔法の
呪文を唱え、聖剣エクスカリバーに
まとわりつかせた。
俺は、聖剣を井戸枠の中に入れて
風の渦を錐のように尖らせるイメージをして
思いっきり聖剣を井戸枠の地面に突き立てた。

すると水がビュゥッと噴水のように井戸枠から
出てきた。
歓声を上げる町の人々。
みんなが井戸枠の側に寄ってくるのを
警ら隊が押し返すのに懸命になっていた。
そんな騒ぎが最高潮に達した時。

グラグラグラと地面が揺れた。
みんな驚いて、小高い丘を降りた。

「地震か?」

俺がギルドマスターに尋ねると

「いや、聞いたことがない。
それにほら、よく見てみろ。
小高い丘は揺れているが
町は揺れていない」

すると突然、小高い丘がブルブルと震え
地面の土や木が四方へ押し寄せた。
町の者は船で逃げていたので
被害は少なかったが、
小高い丘から現れたのはー

「あれはモンスター『フラシメーア』よ!」

そう叫んだのは女魔法使いだった。
モンスターフラシメーアは、
貝殻の退化した海のアメフラシに似ている。
ただ、このフラシメーアは小高い丘一個分の大きさで
聖剣エクスカリバーで貫かれた為に
その痛みに暴れ出したから大変だ。

町の魔法使い達がフラシメーアの周りに
バリアーを張り、町への被害をくい止めていた。
俺は、女魔法使いに言って彼女のスリーピングを
聖剣エクスカリバーに纏わりつかせて
バリアーの壁を突きさして、
フラシメーアに聖剣で強力化させたスリーピングを
フラシメーアにかけた。

効果は抜群でフラシメーアはすぐに眠った。
俺達や船から戻った町の人達が
ぐったりしている時に
町の偏屈な賢者がやってきて言うには、

「モンスターフラシメーアは
ほとんど動かない。
この街ができる前に小高い丘と間違えられる
年月をここにいたのだろう」

続けて

「そして古い文献に書かれておったのだが
不思議な木がモンスターフラシメーアの
表面の水分を吸い上げて成長し、
枝から滝のようにその水を放出し
川ができた場所に、わしらの先祖が
住んだのが始まりのようだ」

「そういうことは早く言ってくださらんかのう」

町長ががっくりして座り込んだ。

「まぁ、そうがっかりするものではない。
わしは長年あの不思議な木を研究していて
種から若木を育てておったのだ。
モンスターフラシメーアに土を被せ、
その上に若木を植えようではないか。」

町の人々はその話をきいて、
賢者コールをするのだった。
俺達パーティーはそれを呆然としながら
見ていたのだった。

そんな俺達にギルドマスターが
やってきて、
報酬の件の話をしてきたが、町長が割り込み、
そもそも聖剣エクスカリバーを
『聖なる』モンスターフラシメーアに
剣を突き立てたのがこの騒ぎなので
町の被害も甚大な物があるので
報酬は払えないと突っぱねた。

俺達パーティーはすごすごと
町を後にした。
・・・・
「な~ん~であたしたちのせいにされるのよっ。
うう、あたしはちゃんと依頼通りやったわよ。
魔力も沢山使ったのに理不尽だわっ。
これというのも剣士、あんたが悪いのよ
っ」

女魔法使いが絶叫した。

その後俺はパーティーを追い出された。
解せぬ。
だがこれは事実だ。
俺は新たなパーティーを求めてさすらうのだった。




善き事がありますように。
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宇宙生物ぷりちーぴm(__)m

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