SS230421焼きそばパンと思い出
SS230421焼きそばパンと思い出・・・🥖
春。
桜は既に北方へ前線を移した四月の
とある高校の校舎の屋上。
そして昼。
「なぁ委員長」
「なんだ」
俺は本を読むのを諦めた。
何故なら話しかけてきた同級生は
話し出すと長いからだ。
こいつは同級生で
つるんでいるダチもいて
クラスの連中ともうまくやっているのに
何故か昼休みは、この場所にやってきて
いつも焼きそばパンを食うのだ。
「それで用件はなんだ?」
「あ、うん。委員長って逆上がりって
何歳くらいでできた?」
「逆上がり?・・・確か幼稚園の年中で
できた記憶があるぞ」
「そうかぁ」
「話はそれだけか」
「ああ、ごめんごめん。
本読むの邪魔しちゃったね。
いやさ、オレって逆上がりできるの
遅くってさ。
小学校に上がってから
やっと出来たんだ」
「そうか。だが今はできるのだろう」
「うん」
「だったら問題ない。
人には誰でも苦手な物の一つや二つはある。
それを克服したのだからいいじゃないか。
例え克服できなくても、
それにトライした事は一つの実績だ。
挫折の道を乗り越えて人は大人になるんじゃないのか」
すると同級生はくすりと笑って
「委員長難しいことを知っているね」
「別に。本の受け売りだ。
俺も完璧な人間じゃない。
挫折多き人間だ」
「そっかぁ。委員長って完璧だと
思っていたけれど実際は努力の人なんだね」
「俺はただの日本の高校生だ。
どれだけあがいていると思っている」
「そうだね。うん、そうだよね。
あ、逆上がりの件なんだけど
俺が小学校低学年の時に
もう、おばあちゃんみたいに
歳をとった女の先生が担任だったんだ」
「そうか」
「その先生がさ。休み時間に
逆上がりのできない子を集めて
教えてくれたんだ」
「それで」
「今ってさ。逆上がりのやり方を教える
システムがあるじゃない。
だけど、その先生はさ
ただ、できるできると言うだけで」
「なるほど」
「でも不思議なんだ。
その先生が、できるできると言うだけで
勇気が湧いてきて
何故かその場にいた全員が
逆上がりができたんだ」
「それは凄いな」
「なぁ、委員長。あの先生って・・・」
「なんだ」
「魔女だったのかな」
俺は眉間に寄った皺を
指で揉んだ。
奴は話し終えてすっきりしたのか
残りの焼きそばパンを口にいれた。
俺も何も言わず本の続きを読もうとしたところ
同級生は何を思ったか
柵につかまって手すりに軽くジャンプして
腹の辺りに横棒をあてた。
俺はギョッとして
「おい、危ないから止めろ」
「いやだなぁ委員長。違うよ。
ちょっと鉄棒を思い出しただけだよ」
そうしてニカっと笑った。
歯には青のりをくっつけて。
「や~め~ろ!」
「へーい」
そう言って同級生はストンと
屋上の床に降りた。
四月の春は気持ちがいい。
問う同級生が広がる青空に
何を思ったのか俺は知らない。
了
善き事がありますように。
お読みいただきありがとうございました。
サイドバーにある、お好きなアイコンを
ぽちりと押して下されば、
望外な喜びです。
宇宙生物ぷりちーぴm(__)m
春。
桜は既に北方へ前線を移した四月の
とある高校の校舎の屋上。
そして昼。
「なぁ委員長」
「なんだ」
俺は本を読むのを諦めた。
何故なら話しかけてきた同級生は
話し出すと長いからだ。
こいつは同級生で
つるんでいるダチもいて
クラスの連中ともうまくやっているのに
何故か昼休みは、この場所にやってきて
いつも焼きそばパンを食うのだ。
「それで用件はなんだ?」
「あ、うん。委員長って逆上がりって
何歳くらいでできた?」
「逆上がり?・・・確か幼稚園の年中で
できた記憶があるぞ」
「そうかぁ」
「話はそれだけか」
「ああ、ごめんごめん。
本読むの邪魔しちゃったね。
いやさ、オレって逆上がりできるの
遅くってさ。
小学校に上がってから
やっと出来たんだ」
「そうか。だが今はできるのだろう」
「うん」
「だったら問題ない。
人には誰でも苦手な物の一つや二つはある。
それを克服したのだからいいじゃないか。
例え克服できなくても、
それにトライした事は一つの実績だ。
挫折の道を乗り越えて人は大人になるんじゃないのか」
すると同級生はくすりと笑って
「委員長難しいことを知っているね」
「別に。本の受け売りだ。
俺も完璧な人間じゃない。
挫折多き人間だ」
「そっかぁ。委員長って完璧だと
思っていたけれど実際は努力の人なんだね」
「俺はただの日本の高校生だ。
どれだけあがいていると思っている」
「そうだね。うん、そうだよね。
あ、逆上がりの件なんだけど
俺が小学校低学年の時に
もう、おばあちゃんみたいに
歳をとった女の先生が担任だったんだ」
「そうか」
「その先生がさ。休み時間に
逆上がりのできない子を集めて
教えてくれたんだ」
「それで」
「今ってさ。逆上がりのやり方を教える
システムがあるじゃない。
だけど、その先生はさ
ただ、できるできると言うだけで」
「なるほど」
「でも不思議なんだ。
その先生が、できるできると言うだけで
勇気が湧いてきて
何故かその場にいた全員が
逆上がりができたんだ」
「それは凄いな」
「なぁ、委員長。あの先生って・・・」
「なんだ」
「魔女だったのかな」
俺は眉間に寄った皺を
指で揉んだ。
奴は話し終えてすっきりしたのか
残りの焼きそばパンを口にいれた。
俺も何も言わず本の続きを読もうとしたところ
同級生は何を思ったか
柵につかまって手すりに軽くジャンプして
腹の辺りに横棒をあてた。
俺はギョッとして
「おい、危ないから止めろ」
「いやだなぁ委員長。違うよ。
ちょっと鉄棒を思い出しただけだよ」
そうしてニカっと笑った。
歯には青のりをくっつけて。
「や~め~ろ!」
「へーい」
そう言って同級生はストンと
屋上の床に降りた。
四月の春は気持ちがいい。
問う同級生が広がる青空に
何を思ったのか俺は知らない。
了
善き事がありますように。
お読みいただきありがとうございました。
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望外な喜びです。
宇宙生物ぷりちーぴm(__)m