ss220422 この告白は・・・(エピソード4)
ss220422 この告白は・・・(エピソード4) :
「・・・さん、夢子さん
起きてください」
満開の桜の花が風に吹かれて
ひらひらと舞い落ちるころ。
私はいつの間にか
桜の木の下で眠っていたみたい。
目を開けるとそこには
一人の学生服を着た青年が立っていた。
見慣れない制服。
私は慌てて起き上がり、
洋服に散らばっていた
桜の花びらを手ではらった。
「あの、私に何の御用でしょうか」
私は恐る恐る青年に尋ねる。
そう、私はこの青年に見覚えがなかった。
なのに彼は私の名前を知っている。
青年はにっこり笑うと
「はい、夢子さん。
信じられないかも知れませんが
僕は貴女のことを存じ上げています。
そして」
青年は一呼吸おくと、
「僕は貴女が好きです」
「え?」
「はい、お慕いしております」
私は戸惑った。
何故なら私はもう八十を優に超えているからだ。
「まぁ、こんなおばあちゃんを
からかうんじゃありませんよ。
ああ、今日はエイプリルフールでしたね」
すると青年が頭をかいて
「そうですね。今日はエイプリルフールでした。
でも、僕があなたをお慕いするのには
変わりありません」
青年はにこやかに私に告げた。
「・・・・」
私は年甲斐もなくどぎまぎした。
こんな孫のような青年に告白されるなんて
この歳であり得るのだろうか。
「夢子さん、覚えていませんか。
僕はあの時この桜の木の下で
『必ず戻って参ります』
と伝えましたよね」
「あっ」
私はその言葉で全てを思い出した。
「傑(すぐるさん)、傑さんなの?」
「はい、やっと戻って参りました」
「怪我は?怪我をされたと伺っておりましたが」
すると傑さんはにっこり笑って
「はい、手当をしていただいて元通りになりました。
夢子さん、お願いがあるのです。
僕は用事があるので先にあの車に乗って
先に家に戻ってください」
「でも、でももう離れるのは嫌です。
・・・いいえ我儘を言ってはいけませんね。
では家でお待ち申し上げております」
「はい、僕もすぐ後を追いますので」
こうして夢子さんは車に乗って
家へと帰って行った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お疲れ様、『傑さん』いえ、拓海君」
ひょこっと学生服を来た少女が桜の木の後ろから
顔を出す。
すると青年はにっこり笑って
「ええ、後は『傑さん』が
夢子さんを迎えに来ることでしょう」
「今日ってエイプリルフールよね」
「嘘はついていませんよ。
『傑さん』は僕の前世ですからね」
桜の花びらが二人の間を舞い散る中
二人は黙ってその光景を見ていた。
了
善き事がありますように。
お読みいただきありがとうございました。
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下されば幸いです。
宇宙生物ぷりちーぴm(__)m
「・・・さん、夢子さん
起きてください」
満開の桜の花が風に吹かれて
ひらひらと舞い落ちるころ。
私はいつの間にか
桜の木の下で眠っていたみたい。
目を開けるとそこには
一人の学生服を着た青年が立っていた。
見慣れない制服。
私は慌てて起き上がり、
洋服に散らばっていた
桜の花びらを手ではらった。
「あの、私に何の御用でしょうか」
私は恐る恐る青年に尋ねる。
そう、私はこの青年に見覚えがなかった。
なのに彼は私の名前を知っている。
青年はにっこり笑うと
「はい、夢子さん。
信じられないかも知れませんが
僕は貴女のことを存じ上げています。
そして」
青年は一呼吸おくと、
「僕は貴女が好きです」
「え?」
「はい、お慕いしております」
私は戸惑った。
何故なら私はもう八十を優に超えているからだ。
「まぁ、こんなおばあちゃんを
からかうんじゃありませんよ。
ああ、今日はエイプリルフールでしたね」
すると青年が頭をかいて
「そうですね。今日はエイプリルフールでした。
でも、僕があなたをお慕いするのには
変わりありません」
青年はにこやかに私に告げた。
「・・・・」
私は年甲斐もなくどぎまぎした。
こんな孫のような青年に告白されるなんて
この歳であり得るのだろうか。
「夢子さん、覚えていませんか。
僕はあの時この桜の木の下で
『必ず戻って参ります』
と伝えましたよね」
「あっ」
私はその言葉で全てを思い出した。
「傑(すぐるさん)、傑さんなの?」
「はい、やっと戻って参りました」
「怪我は?怪我をされたと伺っておりましたが」
すると傑さんはにっこり笑って
「はい、手当をしていただいて元通りになりました。
夢子さん、お願いがあるのです。
僕は用事があるので先にあの車に乗って
先に家に戻ってください」
「でも、でももう離れるのは嫌です。
・・・いいえ我儘を言ってはいけませんね。
では家でお待ち申し上げております」
「はい、僕もすぐ後を追いますので」
こうして夢子さんは車に乗って
家へと帰って行った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お疲れ様、『傑さん』いえ、拓海君」
ひょこっと学生服を来た少女が桜の木の後ろから
顔を出す。
すると青年はにっこり笑って
「ええ、後は『傑さん』が
夢子さんを迎えに来ることでしょう」
「今日ってエイプリルフールよね」
「嘘はついていませんよ。
『傑さん』は僕の前世ですからね」
桜の花びらが二人の間を舞い散る中
二人は黙ってその光景を見ていた。
了
善き事がありますように。
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