SS230414俺と隣の吸血鬼さんと『オレンジピールチョコ』
SS230414俺と隣の吸血鬼さんと『オレンジピールチョコ』・・・🦇
「ねぇ、吸血鬼さん。
小腹が減ったんだけど
何か食べるものない?」
朝からテレワークを部屋でしていた俺は
愛用のマグカップを持って
台所で作業をしている
吸血鬼さんに話しかけた。
そう吸血鬼さん
そう、吸血鬼さん。
ひょんな事から知り合った俺達は、
俺が彼に食事提供(献血)をする代わりに
家事一切を引き受けてもらっている。
しかも、彼は食事(献血)をすると
目からルビーがでて、その分け前の半分を
俺にくれる太っ腹だ。
しかも闇夜の鴉も真っ青な黒い髪は
天使の輪ができていて、
その青い瞳でみつめられたら
どんな女性も首筋を差し出す程の美貌と
きたもんだ。
ま、男の嫉妬もおこらん位の美形である。
まぁ、おかげで俺は、それまで勤めていたブラック企業と
おさらばして、定時定刻出社退社土日祝日有給全消化の
ホワイト企業に再就職。
しかも、吸血鬼さんの手作り料理でコンビニで命をつなぐ
生活ともさよならして、健康優良児と化している。
もちろん、そっちの方が吸血鬼さんにとっても喜ばしい
事なのでウィンウィンの関係だ。
そして最初に戻る。
吸血鬼さんは壁掛けの時計をちらりと見て
「今は10時ですか。
お昼にするには早いですね。
確かこの辺に頂き物の
お菓子がありましたよ」
「おう、何でもいいから
食べさせてくれない?」
すると吸血鬼さんは苦笑して
食卓の椅子に腰かけた俺に
お菓子を置いた。
「オレンジピールチョコ?」
「そうです。
オレンジの皮を砂糖漬けにしてチョコで
コーティングしたお菓子ですよ。
今、紅茶をご用意しますね」
「一本試食していいかな?
ん?旨い。なんかバクバク食べたいな」
すると、紅茶を運んできた吸血鬼さんが
「止めてください。
河童海老ぃせんじゃないのですから。
まぁ、どちらも美味しいのは認めますけどね」
「まぁ、食べる用途が違うからね。
でもオレンジピールチョコって
いかにもお高そうなお菓子
どこから手に入れたの?」
「ええ、先週ショーテン戦隊ショウテンジャーの
手伝いをしていたじゃないですか。
そうしたら昨日、商店街のお惣菜屋さんの
タイムセール待ち仲間のOLさんから
明日はオレンジデーだから、と言って渡されたんです」
「オレンジデー?」
「はい、渡されたとき丁度タイムセールに
なったので、そのままになっていたのですが
家に帰って調べたところ」
「ふんふん、『ところ』?」
「バレンタインデー、ホワイトデーに続く
第三の愛の日に、本日4月14日を
記念日にしたみたいですね」
「どこが?」
「愛媛県の柑橘類生産農家が1994年に
記念日にしたようです」
俺は紅茶を飲み終えて
「ふーん。ああそうか、
バレンタインもホワイトデーも
14日だから4月14日なのかな」
「多分そうでしょうね」
「吸血鬼さん、もてますなぁ。
今ググってみたけれど、
オレンジの花言葉に
「花嫁の喜び」ってあるぞ」
俺はそう言ってにやにやしながら
「で、吸血鬼さんどうすんの?
そのOLさん、遠まわしに・・・」
「それは困ります。
どうしたらいいのでしょうか」
「ハハハ、吸血鬼さんでも
困ることがあるんだ。
そうだな。小輪の黄色いバラが
『笑って別れましょう』という
意味があるみたいだね」
「そうですか。それでは
カモミールのハーブティーを添えて
お断りしておきます」
「ええ!もったいない。
せっかく告白してくれたのに」
「彼女は素敵な方ですが
私は吸血鬼ですから。
何度も別れることが辛いのですよ」
「ああ、そうか。
すまん、気が回らなかった」
「いえ。お気になさらず。
それに今の生活に十分満足していますから」
「そうか。それなら仕方ないね。
じゃぁ、俺。仕事に戻るよ。
ごちそうさま」
「どういたしまして」
俺はマグカップにお茶を淹れると
それを持って自室へ戻った。
だから吸血鬼さんが
「・・・の木を育てようかな」
と小さくつぶやいたのは
聞こえなかった。
了
善き事がありますように。
お読みいただきありがとうございました。
サイドバーにある、お好きなアイコンを
ぽちりと押して下されば、
望外な喜びです。
宇宙生物ぷりちーぴm(__)m
「ねぇ、吸血鬼さん。
小腹が減ったんだけど
何か食べるものない?」
朝からテレワークを部屋でしていた俺は
愛用のマグカップを持って
台所で作業をしている
吸血鬼さんに話しかけた。
そう吸血鬼さん
そう、吸血鬼さん。
ひょんな事から知り合った俺達は、
俺が彼に食事提供(献血)をする代わりに
家事一切を引き受けてもらっている。
しかも、彼は食事(献血)をすると
目からルビーがでて、その分け前の半分を
俺にくれる太っ腹だ。
しかも闇夜の鴉も真っ青な黒い髪は
天使の輪ができていて、
その青い瞳でみつめられたら
どんな女性も首筋を差し出す程の美貌と
きたもんだ。
ま、男の嫉妬もおこらん位の美形である。
まぁ、おかげで俺は、それまで勤めていたブラック企業と
おさらばして、定時定刻出社退社土日祝日有給全消化の
ホワイト企業に再就職。
しかも、吸血鬼さんの手作り料理でコンビニで命をつなぐ
生活ともさよならして、健康優良児と化している。
もちろん、そっちの方が吸血鬼さんにとっても喜ばしい
事なのでウィンウィンの関係だ。
そして最初に戻る。
吸血鬼さんは壁掛けの時計をちらりと見て
「今は10時ですか。
お昼にするには早いですね。
確かこの辺に頂き物の
お菓子がありましたよ」
「おう、何でもいいから
食べさせてくれない?」
すると吸血鬼さんは苦笑して
食卓の椅子に腰かけた俺に
お菓子を置いた。
「オレンジピールチョコ?」
「そうです。
オレンジの皮を砂糖漬けにしてチョコで
コーティングしたお菓子ですよ。
今、紅茶をご用意しますね」
「一本試食していいかな?
ん?旨い。なんかバクバク食べたいな」
すると、紅茶を運んできた吸血鬼さんが
「止めてください。
河童海老ぃせんじゃないのですから。
まぁ、どちらも美味しいのは認めますけどね」
「まぁ、食べる用途が違うからね。
でもオレンジピールチョコって
いかにもお高そうなお菓子
どこから手に入れたの?」
「ええ、先週ショーテン戦隊ショウテンジャーの
手伝いをしていたじゃないですか。
そうしたら昨日、商店街のお惣菜屋さんの
タイムセール待ち仲間のOLさんから
明日はオレンジデーだから、と言って渡されたんです」
「オレンジデー?」
「はい、渡されたとき丁度タイムセールに
なったので、そのままになっていたのですが
家に帰って調べたところ」
「ふんふん、『ところ』?」
「バレンタインデー、ホワイトデーに続く
第三の愛の日に、本日4月14日を
記念日にしたみたいですね」
「どこが?」
「愛媛県の柑橘類生産農家が1994年に
記念日にしたようです」
俺は紅茶を飲み終えて
「ふーん。ああそうか、
バレンタインもホワイトデーも
14日だから4月14日なのかな」
「多分そうでしょうね」
「吸血鬼さん、もてますなぁ。
今ググってみたけれど、
オレンジの花言葉に
「花嫁の喜び」ってあるぞ」
俺はそう言ってにやにやしながら
「で、吸血鬼さんどうすんの?
そのOLさん、遠まわしに・・・」
「それは困ります。
どうしたらいいのでしょうか」
「ハハハ、吸血鬼さんでも
困ることがあるんだ。
そうだな。小輪の黄色いバラが
『笑って別れましょう』という
意味があるみたいだね」
「そうですか。それでは
カモミールのハーブティーを添えて
お断りしておきます」
「ええ!もったいない。
せっかく告白してくれたのに」
「彼女は素敵な方ですが
私は吸血鬼ですから。
何度も別れることが辛いのですよ」
「ああ、そうか。
すまん、気が回らなかった」
「いえ。お気になさらず。
それに今の生活に十分満足していますから」
「そうか。それなら仕方ないね。
じゃぁ、俺。仕事に戻るよ。
ごちそうさま」
「どういたしまして」
俺はマグカップにお茶を淹れると
それを持って自室へ戻った。
だから吸血鬼さんが
「・・・の木を育てようかな」
と小さくつぶやいたのは
聞こえなかった。
了
善き事がありますように。
お読みいただきありがとうございました。
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ぽちりと押して下されば、
望外な喜びです。
宇宙生物ぷりちーぴm(__)m