雑誌彼氏:ショートショート
180331雑誌彼氏:ショートショート
私は一人暮らしのOLだ。
休みの日は布団に潜って一日だらだら過ごすのを
至福とする、いわゆる「干物女」という奴だ。
だっていいじゃん。だれにも迷惑かけるわけじゃなしぃ。
彼氏ン年いないし。
気の置けない女友達が数人と
恋愛ゲームと漫画があれば幸せだ。
そんな私の布団の枕元に雑誌が置いてある。
いわゆるおされ雑誌、違うファッション雑誌だ。
会社の同僚の、私の正体を知る男に
手渡されたのだ。
少しはこれでも読んで人生エンジョイしろと。
ブラック企業気味な会社に疲れた私の
最高は布団と共にある!
だが、少々布団と仲良くするにも飽きてきた
時間帯だ。
雑誌を袋から出して適当な頁を開いて見る。
するとそこにドストライクなイケメンがいた。
そして何としゃべったのだ。
「なぁ、もう少し可愛くしない?目元とか」
私はがばりと布団から跳ね起き、
雑誌のその頁を食い入るように見た。
すると彼は、
「彼女の寝起きの顔ってたまんないね」
などとのたまうではないか。
とっさに雑誌を閉じる。
はっ幻聴かもしれないけれど、
いぎたなく寝た顔なんか雑誌とはいえ
指摘された以上見せたくない。
私は大急ぎで顔を洗い、
メイクをし、フェミニンな服に着替えた。
そして食べた後のカップめんを
台所に持って行き、テーブルの上を
拭いて雑誌を置き、イケメンの頁を開く。
するとイケメンは写真なのに半開きの
その唇から、
「ふふ、メイクきれいだね。
おっと、落ち着いて。
僕は雑誌についているAI-人工知能だ。
ネットとはつながっていないから安心してね。
今日はある人の依頼で君を外に
連れ出そうとしているメッセンジャーさ。
そんな大したところじゃないよ。
QRコードでこの雑誌の『ハートフルバード』という
アプリと連動させて。
そうしたら、君のドレスコードをチェックして
素敵なお店へ連れて行ってあげるよ。
うん、つながったね。
うんうん、その服装で大丈夫。
君の家の近所のおしゃれなカフェへ
行こう。大丈夫、僕がエスコートするから」
あ、雑誌を持って行ってね。
それが目印だから。
その時の私はどうかしていたのかもしれない。
雑誌のイケメンに言われるまま、
家を出て、近所の名前だけは知っている
カフェへと入った。
いらっしゃいませと店員さんが挨拶をする。
そして私が持っている雑誌を見て、
お席までご案内します、と言うではないか。
そして言われるままついて行くと、
そこには会社の同僚の彼がいた。
「ちょっと何であんたがいるのよ」
するといつもは軽口を叩く奴が神妙な顔をして、
「お前にあげた雑誌さぁ、
デートを成功させる雑誌で有名なんだぜ。
俺、お前の事気になっていて、
でも、お前はそういうのに興味がないから
この雑誌に申し込んだんだ。
あ、お前の個人情報は入力してないよ。
雑誌のアドバイザーと相談して
服を選んで、場所を探して、そして
雑誌を気になる相手に渡すんだ。
お前が読んでくれるか賭けだったけどな」
私はへなへなと椅子に座った。
そういう彼も、ちょっとグレードアップした
服装をしている。
「お前がさ、俺の事どう思っているか
分からないけど、この時間だけでも
俺にくれない?」
私はじと目で彼を見る。
「そのセリフも雑誌のアドバイザーに言われたの?」
「ち、違うよ。自分で考えたんだよ」
目が泳いでいる。嘘だな。
でも、ま、ここまでセッティングしたんだ。
彼にこの時間をプレゼントするのはやぶさかではないと
思う私がいるのだった。
了
HP
私は一人暮らしのOLだ。
休みの日は布団に潜って一日だらだら過ごすのを
至福とする、いわゆる「干物女」という奴だ。
だっていいじゃん。だれにも迷惑かけるわけじゃなしぃ。
彼氏ン年いないし。
気の置けない女友達が数人と
恋愛ゲームと漫画があれば幸せだ。
そんな私の布団の枕元に雑誌が置いてある。
いわゆるおされ雑誌、違うファッション雑誌だ。
会社の同僚の、私の正体を知る男に
手渡されたのだ。
少しはこれでも読んで人生エンジョイしろと。
ブラック企業気味な会社に疲れた私の
最高は布団と共にある!
だが、少々布団と仲良くするにも飽きてきた
時間帯だ。
雑誌を袋から出して適当な頁を開いて見る。
するとそこにドストライクなイケメンがいた。
そして何としゃべったのだ。
「なぁ、もう少し可愛くしない?目元とか」
私はがばりと布団から跳ね起き、
雑誌のその頁を食い入るように見た。
すると彼は、
「彼女の寝起きの顔ってたまんないね」
などとのたまうではないか。
とっさに雑誌を閉じる。
はっ幻聴かもしれないけれど、
いぎたなく寝た顔なんか雑誌とはいえ
指摘された以上見せたくない。
私は大急ぎで顔を洗い、
メイクをし、フェミニンな服に着替えた。
そして食べた後のカップめんを
台所に持って行き、テーブルの上を
拭いて雑誌を置き、イケメンの頁を開く。
するとイケメンは写真なのに半開きの
その唇から、
「ふふ、メイクきれいだね。
おっと、落ち着いて。
僕は雑誌についているAI-人工知能だ。
ネットとはつながっていないから安心してね。
今日はある人の依頼で君を外に
連れ出そうとしているメッセンジャーさ。
そんな大したところじゃないよ。
QRコードでこの雑誌の『ハートフルバード』という
アプリと連動させて。
そうしたら、君のドレスコードをチェックして
素敵なお店へ連れて行ってあげるよ。
うん、つながったね。
うんうん、その服装で大丈夫。
君の家の近所のおしゃれなカフェへ
行こう。大丈夫、僕がエスコートするから」
あ、雑誌を持って行ってね。
それが目印だから。
その時の私はどうかしていたのかもしれない。
雑誌のイケメンに言われるまま、
家を出て、近所の名前だけは知っている
カフェへと入った。
いらっしゃいませと店員さんが挨拶をする。
そして私が持っている雑誌を見て、
お席までご案内します、と言うではないか。
そして言われるままついて行くと、
そこには会社の同僚の彼がいた。
「ちょっと何であんたがいるのよ」
するといつもは軽口を叩く奴が神妙な顔をして、
「お前にあげた雑誌さぁ、
デートを成功させる雑誌で有名なんだぜ。
俺、お前の事気になっていて、
でも、お前はそういうのに興味がないから
この雑誌に申し込んだんだ。
あ、お前の個人情報は入力してないよ。
雑誌のアドバイザーと相談して
服を選んで、場所を探して、そして
雑誌を気になる相手に渡すんだ。
お前が読んでくれるか賭けだったけどな」
私はへなへなと椅子に座った。
そういう彼も、ちょっとグレードアップした
服装をしている。
「お前がさ、俺の事どう思っているか
分からないけど、この時間だけでも
俺にくれない?」
私はじと目で彼を見る。
「そのセリフも雑誌のアドバイザーに言われたの?」
「ち、違うよ。自分で考えたんだよ」
目が泳いでいる。嘘だな。
でも、ま、ここまでセッティングしたんだ。
彼にこの時間をプレゼントするのはやぶさかではないと
思う私がいるのだった。
了
HP
