ss191028お笑い芸人の悲劇
ある地方の小さな会館で、
お笑いをする事になった芸人二人が
舞台袖で話している。
「なぁ相方、聞いたか?
今日のお客達は笑わない事で
有名らしいぞ」
「そうなのか、相棒。
なんかものすごく平和的で
穏やかな人達とは聞いているけれど、
お笑い位分かるだろ」
「それが、俺達より以前にお笑いをやった
芸人達がことごとくあそこでは
二度とやりたくないと言って
黙ったしまうらしい」
「そ、そんなこと言ってももう舞台袖に
いるんだぞ、相棒。俺達がその噂を
断ち切ろう!」
「そうだな、がんばろう。相方」
こうして二人のお笑い芸人が舞台袖に出た。
『こんにちはぁ。今日はようこそおいでくださりました』
「て、相方。お前の頭は何でそんなにとんがっているんだ?
バシッと叩くぞっとおおいてぇ。手が刺さった」
とう言って血のついた手を見せる。
もちろん、偽の血糊である。
叩かれた方の頭にも血糊がついている。
すると、客席からキャァッという悲鳴があちこちからあがる。
そして「何て酷い事をするんだ。あの叩かれた方の芸人さん、
CPU検査を受けなくて脳は大丈夫なのか」
などという声が客席から次々と上がる。
内心焦っている芸人二人は
「だ、大丈夫ですよぉ。これは血糊といって
偽物の血なんです」
と相棒がフォローして、
舞台袖からお湯の入った透明な湯船が出てくる。
「さぁ、相方が今からここへ入ります。
中は熱湯です」
そう言われて、相方が褌一丁になって湯船の縁に
またがると客席から、
「やめたまえ!人を熱湯に入れるなんて
それは拷問だ」
「そうだそうだ、何で拷問を見て笑う人でなしに
ならなくてはならないんだっ」
「いますぐやめてぇえ」
会場は怒号の嵐となった。
一事が万事こんな調子で、芸人二人は
終わった後心がボロボロになって
控室に向う廊下を歩いていた。
そこへ男が話しかけてきた。
「あのう、あなた達はお笑い芸人なんですよね。
今日、された芸はどこが面白かったのでしょうか。
このA4用紙一枚に記述してこの封筒に
送ってくれないでしょうか」
男はにこやかに言ってのけた。
芸人二人は即効その会館を離れたのは
いうまでもない。
了
テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学