ss191225人はいつも遥か銀河に手を伸ばし
「おーい、元気でなぁ」
「うまくやれよぉ」
とある惑星の宇宙港。
2億人を乗せた宇宙船団が
今、他の惑星に旅立とうとしている。
その惑星にたどり着くには30年を要する。
それでも人々は未開の惑星での生活を
夢見て旅立っていく。
そう、この惑星は人口が増加しすぎて
惑星軌道上のコロニーも
これ以上は作ることはできないほどだった。
そこで他の惑星へと植民する計画が持ち上がり、
その第一陣が今日飛びだって行った。
「なぁ、俺たち無事たどりつけるかな」
宇宙船内のある一室。
弟は兄にそう尋ねた。
兄は弟の反対側のベッドに寝転んで
タブレットを見ながら、
「大丈夫だろ。この船団を率いる提督は
人望熱い現場を知る人だ。
みんなをまとめあげて無事たどり着くさ」
「2億人だぞ、一国家がまるごと
移動しているようなものじゃないか。
犯罪とかどうするんだ」
「だから一人一人にAIチップが埋め込まれていて
倫理的に問題のある行動は監視されている
ようになっている」
「それが反社会的かどうか判断するのは
宇宙船団の中央人工知能じゃないか
人間は本能的に自由を欲する
その時はどうすればいいんだ」
すると兄は弟に視線を向けて
「そうなったら追放されるだろうな
小型船に乗せられて船団を離れる事になるだろうな」
弟は黙った。
そして星々の映る窓を見た。
彼は窓に手を当てた。そして銀河をつかもうとした。
その後、数年して弟は船団から離れた。
小型船に乗って。
その小型船には30年の移動距離をわずか
1年で移動できるエンジンが搭載されていた。
まだ、小型船にしか積めない代物だったが
彼は宇宙を駆ける船乗りとなる道を選んだのだった。
誰にも邪魔されない自由の翼を欲して
遥か銀河に手を伸ばすように