210730‐5氷にキスして
210730‐5氷にキスして
「行ってきまーす」
朝、僕は妻のヤコに向ってそう言って
玄関を出ようとした。
「待って。コタロ、いつもの挨拶♪」
「いや、今冬だから冷たいからいいよ」
「だめ。今日は取引先と大事なプレゼンがあるんでしょ。
おまじないだから、ね」
そう言って、彼女は持っていた氷のキューブにキスをして、
僕の口の中へと入れた。
僕はいつもその時、鳥肌が立つ。
外は寒風が吹く中、口の中も冷たいのは
本当は勘弁してほしい。
だけど、これは高校時代からの儀式だ。
普通高校の球児とマネージャー。
県大会決勝で相手は県の強豪。
9回裏2アウト満塁のバッターホームに立ちに行く僕に
マネージャーの彼女は
おまじないと言って
一かけらの氷のキューブにキスをして
僕の口に入れたのだ!
・・・・・・・・
「いっへきまふ」
口の中の氷のせいでへんな言葉になりながら
僕は玄関を出た。
・・・・・・・
そうだ、そして僕はさよならホームランを打ったのだ。
みんなに冷やかされたよなぁ。
そんな僕に風が冷たく吹き付ける。
途中のコンビニでホットコーヒーでも買っていこう。
僕はそう考えながら駅へとすいこまれていった。
了
善き事がありますように。
お読みいただきありがとうございました。
宇宙生物ぷりちーぴm(__)m
「行ってきまーす」
朝、僕は妻のヤコに向ってそう言って
玄関を出ようとした。
「待って。コタロ、いつもの挨拶♪」
「いや、今冬だから冷たいからいいよ」
「だめ。今日は取引先と大事なプレゼンがあるんでしょ。
おまじないだから、ね」
そう言って、彼女は持っていた氷のキューブにキスをして、
僕の口の中へと入れた。
僕はいつもその時、鳥肌が立つ。
外は寒風が吹く中、口の中も冷たいのは
本当は勘弁してほしい。
だけど、これは高校時代からの儀式だ。
普通高校の球児とマネージャー。
県大会決勝で相手は県の強豪。
9回裏2アウト満塁のバッターホームに立ちに行く僕に
マネージャーの彼女は
おまじないと言って
一かけらの氷のキューブにキスをして
僕の口に入れたのだ!
・・・・・・・・
「いっへきまふ」
口の中の氷のせいでへんな言葉になりながら
僕は玄関を出た。
・・・・・・・
そうだ、そして僕はさよならホームランを打ったのだ。
みんなに冷やかされたよなぁ。
そんな僕に風が冷たく吹き付ける。
途中のコンビニでホットコーヒーでも買っていこう。
僕はそう考えながら駅へとすいこまれていった。
了
善き事がありますように。
お読みいただきありがとうございました。
宇宙生物ぷりちーぴm(__)m