ss220114俺と隣の吸血鬼さんとショーテンジャー
「なぁ、吸血鬼さんお願いがあるんだけど」
オレはコタツの上の鍋をつつきながら
向かい側でホットワインを味わっている
吸血鬼さんにそう言った。
そう、吸血鬼さん。
ひょんな事から知り合った俺達は、
俺が彼に食事提供(献血)をする代わりに
家事一切を引き受けてもらっている。
しかも、彼は食事(献血)をすると
目からルビーがでて、その分け前の半分を
俺にくれる太っ腹だ。
しかも闇夜の鴉も真っ青な黒い髪は
天使の輪ができていて、
その青い瞳でみつめられたら
どんな女性も首筋を差し出すその美貌と
きたもんだ。
ま、男の嫉妬もおこらん位の美形である。
まぁ、おかげで俺は、それまで勤めていたブラック企業と
おさらばして、定時定刻出社退社土日祝日有給全消化の
ホワイト企業に再就職。
しかも、吸血鬼さんの手作り料理でコンビニで命をつなぐ
生活ともさよならして、健康優良児と化している。
もちろん、そっちの方が吸血鬼さんにとっても喜ばしい
事なのでウィンウィンの関係だ。
そして最初に戻る。
「なんでしょう。どう考えても面倒事な気がしますが」
そう言って吸血鬼さんはホットワインを一口飲んだ。
「あーそうなの。だけど人助けなんだよ。
協力して下さい。お願いします」
俺は居住まいを正して頭を下げる。
そんな俺をみた吸血鬼さんは、
「頭をあげてください。とりあえず話だけは
聞きますから。それから判断します」
「うん、ありがとう。実は商店街婦人部部長から
頼まれてね。引退したショーテン戦隊ショーテンジャーを
やって欲しいんだ」
「うっ。商店街婦人部部長さんのお願いですか」
「そうなの。なぜか部長さんに頼まれると
断れないんだよ」
すると吸血鬼さんは溜息をついて
「そうですね。私もあのご婦人の依頼は
何故か断れません。やるしかないでしょう。
でも何故引退した私がショーテンジャーに
復活しなければならないのですか?」
「そりゃ吸血鬼さん、下は幼稚園児から
上は卒寿のおばあちゃんまで
ハートを鷲掴みしちゃったの忘れたの?
俺なんか一番目立つはずのレッドだったのに
かすむかすむ。おかげで助かったじゃなくて
へこんでいたんだよ。ホントだよ」
吸血鬼さんは肩眉をあげて不機嫌そうに
したので慌ててフォローする俺。
吸血鬼さんは溜息をついて
「それで人助けとは?」
と尋ねる吸血鬼さん。
「うん、今牛乳が沢山余っているの
知ってる?
『牛乳が余っているならバターにすればいいじゃない』
っていう人もいるけれど、バターに加工する処理能力を
大幅に超える牛乳が余っているんだって」
「はぁなるほど。
そうですよね、加工設備を拡大するにもリスクが
ありますしねぇ」
「そう、そこで商店街の人達が考えたのが
ショーテン戦隊ショーテンジャーを活用することなんだ」
「?話がわからないのですが」
「ショーテンジャーって代替わりしても人気があるんだよ。
特に吸血鬼さんのやったショーテンジャーブラックは
今でもファンがいてネットで熱く語られてるんだ」
「う、まだ人気があるんですか?」
「そうなの。それで牛乳を使うレシピセットを販売して、
そのセットを買って下さったお客さんには
ショーテンジャーの一人と写真が撮れるんだ」
「確かショーテンジャーは赤青黄緑ピンク黒銀と
七人いましたよね」
「うん、だからコンプリートしてもいいし、
推しって言って一人のショーテンジャーと
写真を撮ってもOKということで」
「考えましたね」
「それだけじゃない。生活に困っている学生さんや
ご家庭にも牛乳を飲んでもらおうと考えたんだ。
写真代として寄付をすると、寄付の額に応じて
ショーテンジャー数人と写真を撮れるんだ。」
「なるほど、寄付に応じて牛乳を飲みたくても飲めない層に
アプローチするということですか。
分かりました。私も商店街の方々には、おまけをいただいたり
安くしていただいたりしています。
ご協力いたしましょう」
「ありがとう、吸血鬼さん」
「いえ、このご時世ですから、
三密になりすぎないように手配を
お願いします。
というか、集まり過ぎて圧死しかけたのが
トラウマになっておりますので」
「それはもちろん。
商店街の総力をあげて対応するよう
つたえておくよ」
「うまくいくといいですね」
「ああ、本当にな」
俺は冷蔵庫から牛乳を出して、
二人で乾杯したのだった。
了
善き事がありますように。
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宇宙生物ぷりちーぴm(__)m
テーマ : オリジナル小説
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