ss220318焼きそばパン型多目的ジェンガ:
昼。
ここはとある学校の校舎の屋上。
俺は早々に昼飯を食べ本を読もうと
独りを楽しむはずだった。
「ねぇねぇ委員長」
俺を呼びかける声を発したのは、
同じクラスの同級生だった。
普段であれば読書の邪魔と
適当な相槌をうつだけの関係なのだが、
こいつは気にもせず、大好きな焼きそばパンを
もぐもぐと食べながら話しかけてくる。
「ちょっと黙ってくれ」
俺は床にチョークで陣形を書き、
桜の花弁を配置する。
風は無い。
「ねぇねぇ委員長何やってんの」
同級生は焼きそばパンをもぐもぐ食べながら
俺の側にやって来る。
「おい、静かにしてくれ。
桜の花弁を動かすな」
「ふぅん、全集中だね。
でも、交換条件だな。今からオレが焼きそばパンを
食べ終えたら、焼きそばパンゲーム、
そう多目的ジェンガで遊んでくれたら
静かにする!!」
そう言って同級生はえっへんとえらそうな態度をとった。
俺はギロリと同級生を睨んだ。
すると奴は
「あ、ごめんごめん。うそうそ。
でも委員長ぉ。あ~そ~ぼ~よぉ」
俺はげんなりした。
「分かった。だからしばし待て。
これが終わったら遊んでやる」
「あっそうだ。そうだね。さっきから
なにやってんの魔法陣作ってんの
桜の花びら入れてそれどうすんの
あ、だったら、この焼きそばパン型のジェンガを
いれたら面白そうだね。
よし、そうしよう。オレ手伝うよ」
そう言うと同級生は、
焼きそばパン型のジェンガを一つ
俺の書いた陣形の中に入れた。
ぽとん、と陣形から音がして
スッとジェンガが吸い込まれる。
次の瞬間、陣形からうねうねとうねる
髪の毛があふれ出てきた。
色も味も焼きそばパン風味!
「委員長ーっ助けてぇ」
俺は頭を抱えた。
同級生は焼きそばパン風味の髪の毛に
絡まれていた。
俺は急いで印を結んで髪の毛を
陣形に戻した。
そしてキッと同級生を睨むと
「だから勝手な真似をするなと言っただろう」
「うぇっ、うえっ、ごめんよう委員長」
その様子にあほらしくなった俺は
「もういい。だが次は邪魔をするなよ。
お前、ヘアドネーションって知っているか。
ある決められた長さの髪の毛を、
癌治療などで髪を失った子供達へ
ウィッグの材料として送るんだ。
俺の知り合いの子で、桜色のウイッグを
希望している子がいてな。
それを作るためにこうしてこの本にある
陣形を書いていたんだ」
俺は本を見せながら同級生に
言った。
すると奴は静かになって、頷いた。
俺はもう一度陣形を書き、
今度は成功した。
桜色の滑らかな髪の毛が現れた。
「それ、大量に作れないの」
同級生が遠慮がちに聞いていた。
「かなりエネルギーを消耗するからな。
今年は一人分が精いっぱいだ。
それに周りには黒髪にしか見えない。
しかし、この桜色のウィッグをつけると
桜の花が咲いているところなら
どこでも行けるんだ」
「え、それ凄いね」
「夢の中だけどな。
だが、夢渡りができる。
日本だと大体桜の木がある。
1本あたり一つの町をカバーできる位の
夢渡りができる。
その子は遠く離れた友達の夢の中に入って
思いっきり遊ぶそうだ」
「そっかぁ。
その子、春を楽しむといいね。
じゃあ、じゃぁ俺、髪の毛伸ばすよ。
オレにできることをするよ」
「そうだな。魔術に頼らず自然が一番だからな。
本当はな」
辺りに焼きそばパン型ジェンガが転がっていた。
俺はそれを拾い集めて、
「おい、時間が無いぞ。遊ぶんなら早く遊ぶぞ」
同級生はニカリと笑った。
了
善き事がありますように。
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宇宙生物ぷりちーぴm(__)m
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