SS220930 ビターなナイフを持つ彼女11
SS220930 ビターなナイフを持つ彼女11 :
隣の席の彼女は鋭い刃物
彼女は心臓にナイフを
握りしめている
学校の教室。
陽の光が夜の闇に溶け込むのが
早くなっている秋。
その薄暗い教室に彼女と僕はいる
「『餌』」
彼女は僕に言う。
「『餌』じゃないよ。僕にも名前が」
「し、【魔】が現れた!」
夜の闇に溶け込む日の光のわずかな隙間から
美しい黒い羽を持った天使ー【堕天使】が現れた。
【堕天使】は慈悲の笑みを浮かべて彼女に言う
「辛かったでしょう。
貴女は人の記憶を吸い取るそのナイフを
我らに振るう時、今は自分の寿命を使っているのでしょう?
神はなんと無慈悲なことをするのか。
さぁ、私の手をとって【魔】とおなりなさい。
この世は修羅の世界。
人々は争い憎しみ堕落している。
そこから出る【魔力】はつきることがない。
もう、貴女は苦しまなくていいのですよ」
「言いたいことはそれだけか?」
彼女の横顔は無表情にそう告げる。
そして心臓からビターなナイフを
苦し気に抜き出した。
その右手のナイフは真紅の香りに濡れている。
「『餌』、下がってろ」
「嫌だ、僕にもヨーヨーがある。
それに何故自分の寿命を使っていたんだ!
僕の記憶を使え!」
「ほほほ、麗しい友情ですね」
【堕天使】が黒い長剣を柄から取り出して
彼女のビターなナイフを受け止めた。
彼女と【堕天使】は一進一退に
せめぎ合っている。
僕は隙を点いてヨーヨーを【堕天使】の首に巻きつけた。
「何をする小僧!」
【堕天使】は柔和な表情をかなぐり捨てて悪鬼の形相になった。
そして、僕は不思議なことに気が付いた。
ヨーヨーの糸をたどって、邪悪な気がだんだん僕に近づくと
キラキラと美しい気へと変り、僕の中へ吸い込まれるのだ。
「な、小僧!きさま何者だっ。私の気を吸い取るとはっ
ぎゃあああああ」
僕に気を吸い取られ、彼女のビターなナイフに深々と胸を突かれ
【堕天使】は雲散霧消した。
彼女はその情景をじっと見た後、僕の方に向いて
「『餌』、お前何者だ?」
「さ、さぁ?なんだろうね。空気清浄機かな」
そう言った途端、僕は息切れを起こして倒れ込んだ。
「おい、『餌』。落ち着け、お前の中の陰陽のバランスが
くずれたんだ。すこし痛いが我慢しろ」
そう言って、彼女はビターなナイフの切っ先を
僕の右腕に少し刺した。
僕は顔をしかめたが我慢した。
だって、綺麗な気がビターなナイフに吸い込まれて
いったから。
そうして彼女はビターなナイフを僕の腕から離した。
腕には血が流出していなかった。
ただ、赤い痣ができていた。薔薇のような小さな痣が。
彼女は黙って、ビターなナイフを心臓にしまう。
そして僕をおいて教室を出て行ってしまった。
僕はぽかんとして床に座り込んでいた。
陽はもう夜の闇の中に溶け込んでいた。
隣の席の彼女は鋭い刃物
彼女は心臓にナイフを
握りしめている
了
善き事がありますように。
お読みいただきありがとうございました。
サイドバーにある、お好きなアイコンを
ぽちりと押して下さり、
ショッピングなどのぞいて頂ければ
望外な喜びです。
宇宙生物ぷりちーぴm(__)m
隣の席の彼女は鋭い刃物
彼女は心臓にナイフを
握りしめている
学校の教室。
陽の光が夜の闇に溶け込むのが
早くなっている秋。
その薄暗い教室に彼女と僕はいる
「『餌』」
彼女は僕に言う。
「『餌』じゃないよ。僕にも名前が」
「し、【魔】が現れた!」
夜の闇に溶け込む日の光のわずかな隙間から
美しい黒い羽を持った天使ー【堕天使】が現れた。
【堕天使】は慈悲の笑みを浮かべて彼女に言う
「辛かったでしょう。
貴女は人の記憶を吸い取るそのナイフを
我らに振るう時、今は自分の寿命を使っているのでしょう?
神はなんと無慈悲なことをするのか。
さぁ、私の手をとって【魔】とおなりなさい。
この世は修羅の世界。
人々は争い憎しみ堕落している。
そこから出る【魔力】はつきることがない。
もう、貴女は苦しまなくていいのですよ」
「言いたいことはそれだけか?」
彼女の横顔は無表情にそう告げる。
そして心臓からビターなナイフを
苦し気に抜き出した。
その右手のナイフは真紅の香りに濡れている。
「『餌』、下がってろ」
「嫌だ、僕にもヨーヨーがある。
それに何故自分の寿命を使っていたんだ!
僕の記憶を使え!」
「ほほほ、麗しい友情ですね」
【堕天使】が黒い長剣を柄から取り出して
彼女のビターなナイフを受け止めた。
彼女と【堕天使】は一進一退に
せめぎ合っている。
僕は隙を点いてヨーヨーを【堕天使】の首に巻きつけた。
「何をする小僧!」
【堕天使】は柔和な表情をかなぐり捨てて悪鬼の形相になった。
そして、僕は不思議なことに気が付いた。
ヨーヨーの糸をたどって、邪悪な気がだんだん僕に近づくと
キラキラと美しい気へと変り、僕の中へ吸い込まれるのだ。
「な、小僧!きさま何者だっ。私の気を吸い取るとはっ
ぎゃあああああ」
僕に気を吸い取られ、彼女のビターなナイフに深々と胸を突かれ
【堕天使】は雲散霧消した。
彼女はその情景をじっと見た後、僕の方に向いて
「『餌』、お前何者だ?」
「さ、さぁ?なんだろうね。空気清浄機かな」
そう言った途端、僕は息切れを起こして倒れ込んだ。
「おい、『餌』。落ち着け、お前の中の陰陽のバランスが
くずれたんだ。すこし痛いが我慢しろ」
そう言って、彼女はビターなナイフの切っ先を
僕の右腕に少し刺した。
僕は顔をしかめたが我慢した。
だって、綺麗な気がビターなナイフに吸い込まれて
いったから。
そうして彼女はビターなナイフを僕の腕から離した。
腕には血が流出していなかった。
ただ、赤い痣ができていた。薔薇のような小さな痣が。
彼女は黙って、ビターなナイフを心臓にしまう。
そして僕をおいて教室を出て行ってしまった。
僕はぽかんとして床に座り込んでいた。
陽はもう夜の闇の中に溶け込んでいた。
隣の席の彼女は鋭い刃物
彼女は心臓にナイフを
握りしめている
了
善き事がありますように。
お読みいただきありがとうございました。
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宇宙生物ぷりちーぴm(__)m