この手が憎い:ss
180515この手が憎い:ss
ギギギギギギィ~
真夜中、ドアが静かに開く音がする。
築40年の中古住宅なので
その軋む音は考慮に入れない。
ミシッミシッミシッ
廊下が軋む音も
築40年の中古住宅なので
以下同文。
そして女は台所へと向かう。
冷蔵庫を開ける音がする。
ペロリと舌なめずりをして、
パックの肉を引きずり出す。
そしてそうっと、フライパンを出し
ゴマ油を垂らす。
ニタリと笑顔がこぼれる女。
その時、パッとリビングの電気がついた。
「お姉ちゃん、一人で焼き肉食べようなんて
ずるいっしかもこんな夜中に」
「えへへ、だってお腹が空いたんだも―ン」
「それ、あたしも食べる」
「じゃぁ、もう一パックお肉出して、
あ、後ビールも出してネ♪」
パァンとリビングとの境のふすまが開く。
「このバカ娘どもぉ二人合わせて
体重160㎏が夜中に夜食を食うなぁ」
母の怒声が夜のしじまを切り裂く。
「まったく冷蔵庫に貼った
ダイエット目標はどうなったのよ」
すると姉妹は肉を焼きながら、
「この手が憎い、肉い~」と
おやじギャグを言った。
了
HP

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