影のキューピッド：ｓｓ

180523影のキューピッド：ｓｓ

「お前にある仕事なんかねぇよ。だからここで働けよ」
よく考えたら失礼な言葉だ。
だが、その時のあたしは何も考えられないほど
疲れていた。
「いますぐどうするのか決めろ」
奴は考える時間すら奪った。
あたしはその手をとった。
あたしはそれほど疲れていた。
結果は散々だった。
あたしが奴に色仕掛けで仕事場に
残ったと周りに受け取られ。
いじめが始まった。
あたしは耐えられなかった。
仕事でミスが重なった。
遂に仕事をやめる事になった時、
奴は罵倒した。
元はと言えば奴があたしを引きとめたのだ。
仕事をやめようとしていたあたしに対して。
その時、あたしの肩からふっと力が抜けた。
弱い男だ。可哀想な男だ。
自分の弱さを隠す為に人を罵倒する事で
虚勢をはる。
あたしは仕事を辞めた。
しかも、即刻。
「向かない仕事につくもんじゃないねぇ。
性質の悪い男に時間を無駄にさせられたねぇ」
「ううん、あたしに人を見る目がなかったんだよ。
そして、自我が弱かった。
それが分かっただけでもいい経験だったと
思う？事にする。
それよりさぁ、影、あの男にプレゼントしようよ。
あんたの影のキューピッドでさぁ。
気が強くて押しの強い見栄っ張りな女と
両想いにさせてあげて、ね♪」
あたしの影のキューピッドはため息をついた。
「そんなに怒っているのなら、
いいなりになるなよな。もっとしっかりしろよ」
「あははは、しっかりしたあたしからのお礼だよ」
あたしは立ちあがった。
今日もいい天気だ。
了


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