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SS200919レベル1のヘルゲート「トルネードはほどほどに」181204改

SS200919レベル1のヘルゲート「トルネードはほどほどに」181204改:

「さぶっ」
俺は出前の配達の愛自転車を
漕ぎながらつぶやいた。
風は木の葉を地面に散らし、
自転車の回転に合わせてカサカサ音を奏でる
今日この頃だが、なんとなくつぶやくこの言葉に
郷愁を漂わせるのは仕方ない。
俺は食堂にたどりつく。
自転車を片づけ店に入り、
「ただいま戻りました」と店長に声をかける。
「おう、ご苦労さん。賄い飯食べろよ」
と店長が声をかけてくる。
その声に応えながらそっとつぶやく。
「いつになったら俺の世界に帰れるんだろ、はぁ」
あ、俺、唯の出前のバイトだけど、
今いる世界、地球じゃなくて異世界ナンデス。

いやぁ、最初は困ったよ?
何しろここはどこ?家はどこ?腹減ったどうしよう
と悩んでいたら、
この世界では異世界人って結構出現するらしく、
対応ばっちりお役所仕事サクサク進んで
家も職ももらえて、一応元の地球の移転時間に
合わせて戻れるよう確認してくれるという
親切ぶりだった。

で、紹介された職が住み込みの食堂の出前持ち。
この世界って、魔法があるけれど
一般人はそんな大して使えない世界。
まだ馬車が活躍している生活水準なのに、
何故か自転車はあった。
何故だ?文明の発展手順が違うくね?
と思ったけれど、どうやら
俺より以前に異世界転移しちゃった人が
魔術師と協力して根性で作り上げたらしい。
でも、庶民にとってはちょっと手を出すのは
ためらう値段なのに、
何故か店長が持っていて、
俺に出前の時に使えと貸してくれた。
ただし、出前の中身がこぼれない装置は
開発してくれなかったので、
俺は店長のシゴキじゃなくて猛特訓で
中身をこぼす事無くお客さまに届ける
事ができるようになった。

「で、店長。次の出前先はどこですか?」
おれは賄いの飯を食べ終えて店長に尋ねた。
「おう、いつもの『ヘルゲート』だ」
俺の身体に緊張が走る。
「王立魔術学院ですね」
「そうだ。そこへ出前だ」
ー王立魔術学院。そこは偏屈魔術師の集まりだった。
本来、国の一機関に出前を届けるのに
身構える必要はない。
だが、そこは偏屈魔術師の巣窟。
自分の魔術を使いたくてたまらない連中の集まりだ。
裏門?怪しげな魔術道具が所狭しと置かれていて
いつ何が発動するかわからない道を通れるのは
魔術に精通する業者でないと危なくて仕方がない。
それでもこの国ではレベル1の穴場と言われている。
  正門は「休戦協定」というやつが発動しないと
一般人は通れない。
それなしで唯一出前を届けられるのがこの俺だ。
「アイサー、出前はこれですね。
届けてきます」
「おう、気を付けてな。
その前にこれを持っていけ。
諜報員から連絡があった」
「?風呂敷?中に何か入ってますね」
「今回の相手は『トルネード使い』
だそうだ。その
そうすると必然的に鳥使いも
出てくる。その対策だ。
鳥が出てきたらこの風呂敷の中身を
撒くんだぞ、いいな、行け」
店長がお玉を振って合図する。
愛自転車にまたがり
出前へと疾走した。

そして王立魔術学院の正面ゲートに
到着した。
俺は風呂敷を確かめ、
首の前の結び目をしっかりと結び直す。

何故か王立魔術学院の門から
正面ゲートへの道の上を
トルネードが舞っている。

まぁ、王立魔術学院としても
魔術師たちの魔術の暴走で
建物や敷地を破壊されると困るので、
結界を張っているようだ(周囲が壊れてないから)。

そして、俺がいる正面の門の側に
気障な男がいる。
「ふふふ、来たね、出前君。
このトルネードを通って
見事出前を届けてみるがいい。
ちなみにトルネードを除けて
正面玄関には入れないよ」
どうやらこの男が作ったらしい。
俺はため息を一つつく。

「おほほほほ、兄さまのトルネードは
そうそう突破できなくてよ」
気障な男の魔術師の隣に
毒々しいピンクの髪のツインテールで
胸元にハート型の穴が開いた
黒のフェザースーツを着ていてミニスカの
女魔術師がのたまう。

そして
「出前の男、上を見るがいい。
我の鳥達がお前を待っているぞ」

げぇ。トルネードの上空側で、
なんの鳥か分からないけれど
ザ・バード状態の鳥たちが
俺を待ち受けていた。
俺は覚悟を決めた。
トルネードに向って突き進む。
「異世界人なめんなよっ」
この自転車がどうなっているのか
俺の異世界人として
なんか力を発揮しているのか
分からないが、
俺はトルネードの渦に添って
昇って行く。

すると鳥達が俺の後を追って
ついてくる。

俺は、首にくくりつけていた
風呂敷を外した。
中からは使い魔鳥専用の餌が
トルネードに添って散って行く。
そして、使い魔鳥達が
それを器用に食べていく。

俺はトルネードの上迄行って、
その勢いに乗って、
正面玄関に降り立った。

そしてふぅっと息をつく。
正面玄関のドアをノックする。
「すいませーん。管理人さん
出前一丁届けにまいりました」

・・・・・・・・・
出前を届けて後ろを振り向くと、
トルネードは収まっていた。
正面玄関の脇で
顎をカクンと下げた
気障な魔術師がいた。
その隣で妹の鳥使いが
悔しそうに俺を睨んだ。

「くううう、出前の男!
兄さまのトルネードは本当に凄いのよ。
次回は負けませんわよ」

そう言って俺の自転車を前輪を蹴とばした。
その拍子に、俺は彼女の胸に顔が触れた。
「い、いや。これは事故であのその
わざとじゃない!不可抗力だっ」

「いやぁぁああああ。変態いいいいいい」
俺は鳥使いいや、魔鳥使い(妹)に
拳で頬を殴られ、自転車ごと吹き飛ばされた。
「おのれ、我が妹の胸に触るとはいい度胸だな。
私のトルネードを受けるがいい」

「管理人さーん街中で魔術行使違反する
人たちがいますぅうううう」
俺は這う這うの体でその場を離れた。

「俺は何も悪くない。
頬が痛いよぉ」

「なぁに頬を腫らして自転車
漕いでいるんだい」
そう呼び止めたのは
焼き鳥屋の娘だった。
「ちょっと待ってな。
ほら、湿布薬。
ヒリヒリするけど男なんだから
耐えな。
もう、焼き鳥おまけしてやるから。
じゃぁ、気を付けるんだよ」

焼き鳥屋の娘は何も聞かずに
俺の手当てをして焼き鳥をくれた。
俺は、それを泣きながら食べた。
ヘクチ、風が冷たい。
早く店に帰って賄い食べよう。
温まろう。
そんな思いで自転車を漕ぐのだった。


お読みいただきありがとうございました。

善き一日をお過ごしください。

宇宙生物ぷりちーぴm(__)m
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