190404詩:形
190404詩:形
幼い頃、畳の部屋で
異形を見た。
なんだか黒々として
形を成さぬ物。
だが、それらは優しかった。
一人でままごとをする私に近寄って
一緒に遊んでくれた。
目らしきところは
落ちくぼんで黒い穴だったが、
私は怖くなかった。
一緒に遊んでくれるのが
嬉しかったから。
春の穏やかな日差しは
畳の奥まで届かない。
その暗い空間で
私は異形の物達と
遊んだ。
静かに静かに。
そう、大人に知られぬように
密やかに。
そしていつしか年月が達
私にも友達ができて
外で遊ぶ時間が増えた。
いつの間にかあの
畳の部屋で遊んだ
異形の物達を忘れていった。
そしてたっぷり大人になった時、
ふと畳の部屋を見た。
そこには異形の物達が
静かにほほ笑んでいた。
了
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