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ss201010レベル1のヘルゲート「痛いのはお嫌い?」

ss201010レベル1のヘルゲート「痛いのはお嫌い?」:

「ああ、金木犀の香りだ」

俺は出前の配達の愛自転車を
漕ぎながらつぶやいた。

柔らかな秋の日差しの中を
愛自転車のペダルを踏んで
金木犀の香りがまとわりつく
季節は秋真っただ中。

俺は食堂にたどりつく。
自転車を片づけ店に入り、
「ただいま戻りました」と店長に声をかける。
「おう、ご苦労さん。賄い飯食べろよ」
と店長がぼそりと言う。
その声に応えながらそっとつぶやく。
「いつになったら俺の世界に帰れるんだろ、はぁ」
あ、俺、唯の出前のバイトだけど、
今いる世界、地球じゃなくて異世界ナンデス。

いやぁ、最初は困ったよ?
何しろここはどこ?家はどこ?腹減ったどうしよう
と悩んでいたら、
この世界では異世界人って結構出現するらしく、
対応ばっちりお役所仕事サクサク進んで
家も職ももらえて、一応元の地球の移転時間に
合わせて戻れるよう確認してくれるという
親切ぶりだった。

で、紹介された職が住み込みの食堂の出前持ち。
この世界って、魔法があるけれど
一般人はそんな大して使えない世界。
まだ馬車が活躍している生活水準なのに、
何故か自転車はあった。
何故だ?文明の発展手順が違うくね?
と思ったけれど、どうやら
俺より以前に異世界転移しちゃった人が
魔術師と協力して根性で作り上げたらしい。
でも、庶民にとってはちょっと手を出すのは
ためらう値段なのに、
何故か店長が持っていて、
俺に出前の時に使えと貸してくれた。
ただし、出前の中身がこぼれない装置は
開発してくれてなかったので、
俺は店長のシゴキじゃなくて猛特訓で
中身をこぼす事無くお客さまに届ける
事ができるようになった。

「で、店長。次の出前先はどこですか?」
おれは賄いの飯を食べ終えて店長に尋ねた。
「おう、いつもの『ヘルゲート』だ」
俺の身体に緊張が走る。
「王立魔術学院ですね」
「そうだ。そこへ出前だ」

ー王立魔術学院。そこは偏屈魔術師の集まりだった。
本来、国の一機関に出前を届けるのに
身構える必要はない。
だが、そこは偏屈魔術師の巣窟。
自分の魔術を使いたくてたまらない連中の集まりだ。
裏門?怪しげな魔術道具が所狭しと置かれていて
いつ何が発動するかわからない道を通れるのは
魔術に精通する業者でないと危なくて仕方がない。
それでもこの国ではレベル1の穴場と言われている。
  正門は「休戦協定」というやつが発動しないと
一般人は通れない。
それなしで唯一出前を届けられるのがこの俺だ。
「アイサー、出前はこれですね。
届けてきます」
「おう、気を付けてな、と
その前にこの装備を持っていけ」
そう言って店長が出したのは
紙袋だった。
空けてみると聖水?らしき物が入っていた。
「諜報部員からの連絡だ。
今回の敵にはこれが役に立つらしい。
何かあったら相手にふりかけろ。
そして取り出しやすい所にしまっておけ」
そう店長は言ってお玉を振って
行けと合図する。
俺は仕方がないので前かごの
空いてる所に紙袋を押し込んだ。
そして俺は愛自転車にまたがり
出前へと疾走した。

そうして王立魔術学院の正面ゲートに
到着した。

「ふふふ、待っていたわよデマエ二スト」

「・・・」

俺はどうリアクションしていいのか分からなかった。

そこには不思議の国アリスの格好をした
少女がいた。ただし何故か厚塗りで。

「私はキャンディアリス。
私の能力は『歯の治療』よ!」

「ソウデスカ。オレイマムシバナインデシツレイシマス。」

俺は半眼になりながら相手を刺激しないように
彼女の隣を通り過ぎようとした。
すると彼女がぐわしと俺の髪の毛を
つかんだ。l

「何するんだ!
男の髪はデリケートなんだぞっ」

するとキャンディアリスはふふんと笑って
俺の頭を上に向けさせると
下あごをぐわしと掴み俺の口を開けさせた。

「あらぁ確かに虫歯はないわね。
きれいな白い歯が並んでいるわ。
ふふふ、だったらこの虫歯菌だらけのキャンディを
お食べなさい!
そうしたらすぐに虫歯になるから歯の治療を
してあげるわ」

少女の力とは思えない怪力で
俺の顎は固定され、今にも虫歯菌だらけの
キャンディを口につっこまれそうになった。

俺は死に物狂いで前かごに入れた
紙袋を掴んだ。
そして中にあった聖水のボトルを開けて、
キャンディアリスにふりかけた。

「きゃぁああああ。いやぁあぁあああ」

しゅわわわわ〜。

キャンディアリスの空だからドライアイスみたいな
白い煙が立ち昇る。

俺は必死になって王立魔術学院の正面玄関に
愛自転車を走らせた。

王立魔術学院の玄関まで行って

「ちわーす。管理人さん出前持ってきましたぁ」

すると玄関のドアが開いて、

管理人さんがにっこり笑って

「いつもお疲れ様。はい、これお代と
空の容器ね。気を付けて帰ってね」

と言われた。

・・・癒される。俺はすさんだ心が浄化されるようだった。

( ´Д`)=3 フゥ帰るか。と

愛自転車の向きを変えると

むぐっと口に何か入れられた。

甘い。これはキャンディだ。

そして目の前には「キャンディアリス?」と

思わず疑問形になる50歳過ぎの美魔女が

立っていた。

「そうよ。キャンディアリスよ」

どうやら服が聖水で溶けて下着だけに
なってしまったようだ。
ついでに厚塗り化粧もとれたらしい。

「よくも恥をかかせてくれたわね。
それは虫歯菌のついたキャンディのかけら。
それでも虫歯になるからせいぜい苦しめばいいのよ。
おほほほほほほ」

俺は真っ青になった。
そして愛自転車を高速で走らせて
聖母教会へ向かった。
そしていつもお世話になっている
聖母教会の巫女さんに事情を話し、
虫歯に効く聖水を頂いて飲んだ。

「大丈夫ですよぉ。大した虫歯菌ではないので
この聖水を三日飲めば治ります。
お大事に」

俺はお礼に献金をはずんで聖母教会を後にした。

聖母教会の巫女さんが
(くぅ、折角胃袋をつかもうとスイートポテトを
作っていたのにぃ)
と心の中で叫んでいたのは俺の
あずかり知らない事だった。




善き事がありますように。


お読みいただきありがとうございました。

宇宙生物ぷりちーぴm(__)m
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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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