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ss211224白紙16

ss211224白紙16


今日はクリスマスイブ。
吾輩の机の上にはその時に供される
ケーキの生クリームだけが広がっているような
原稿用紙が積んである。

そう、白紙だ。

「ジングルベールジングルベール
白い紙~♪」

歌っているのはカット済みのショートケーキと
緑茶を持ってきた愚妻である。
こやつは今日、娘家族たちがやってきたのに
挨拶もそこそこに白紙の原稿用紙と格闘する為
書斎にこもった吾輩を皮肉っているのだ。

「あなた、ちょっとくらいリビングで
孫たちと遊んだらどうですか。
どうせここで唸ってもアイディアの一つも
ひねりだせるわけでもないし。
ほら、逆に孫たちと遊んだら
いいしアイディアの一つも思いつくかもしれませんよ」

そう一気に言うと机の上にケーキとお茶を置く。
吾輩は溜息を一つつくと

「この作品はそういうアットホームな内容ではないのだ。
夫に先立たれ、孫のような年齢の男性と恋に落ちた老婦人が
その年齢差に悩みながら離れられず苦悩して、
冬の日本海沿いを二人でひたすら旅さすらう話なのだ」

「まぁ、私だったら福島のハワイアンズに行って
楽しむのに」

「日本海沿いをふぐやカニを食べ現地のイルミネーションやイベントを
【苦悩しながら】旅をするという内容で
その資料がPCに大量添付されているのだ」

「まぁ、だったら取材旅行ということで二人で出かけられないかしら」

「あのやり手の編集者がそんな費用を出すわけなかろう。
だからこうして資料と格闘しながら原稿と向き合っているのだ」

「なんだか原稿が荒波にさらされているようですけど。
分かりました。孫と遊ぶのは諦めますけど
根を詰め過ぎないようにね。
私は娘たちの相手で忙しいですから。
ああ、忙しい忙しい」

そう言いおいて愚妻は部屋を出て行った。
後に残ったのは愚妻の言いぐさに腹を立てた己と
白い原稿用紙のみ。

「ええい、これが吾輩のようなロマンスグレーと
若い女性ならなんの問題も無くすらすらかけるのに」

思わず愚痴がこぼれる。
そんなのは儂の読者層は好まず、
愚妻はツンケンし
編集者の渋柿をつぶしたような苦笑いが待っている。

「メリークリスマス 男女平等万歳」

儂は小さくつぶやいて、愚妻の置いていったケーキを
口にするのだった。


善き事がありますように。

お読みいただきありがとうございました。

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宇宙生物ぷりちーぴm(__)m
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