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SS230602絶体絶命!!17「人の話はよく聞きましょう」

SS230602絶体絶命!!17「人の話はよく聞きましょう」・・・⚔


「うーん、昨日は久々に
清潔な町の宿屋に泊まれて
良かったわぁ」

そう言ったのはパーティーを
組んでいる女魔法使い。

「ホーンと。
小ざっぱりして気持ちのいいベッドに
サービス満点な朝食が良かったぜ」

道の傍らの草を千切って
口笛よろしく遊んでいた、これも
仲間の若いシーフ。

そういう俺は剣士で、
この二人とパーティーを組んで
各地の冒険者ギルドの依頼を受けて旅をしている。

「それにしても最大の難点は
治安が良すぎて冒険者ギルドの依頼が
ちーんまりしたのしか無かったのが
問題だったわねぇ。あの町」

「そうなんだよねぇ。
今は懐もあたたかいし
さすがに冒険者なりたての
お子ちゃまがする
町はずれの薬草採りじゃぁねぇ」

「そうそう、ちょっとする気になれないわね」

俺はそんな二人のやりとりを
口の端をあげて聞いていた。

ぽかぽかと気持ちのいい陽射しを浴びて
次の村へと歩くのはそうでなくとも
人の心を明るくさせる。

するとそんな平和な時間を
打ち破る声が聞こえてきた。

「大変だぁ大変だぁ」

「なんだなんだ。
あ、あれは教会の人間だな」

目のいいシーフがそうつぶやく。

「とりあえず、急ぎましょ。
モンスターが出現したのかもしれないわ」

そう言ってダッシュしたのは女魔法使い。
俺もシーフも後に続く。

「あら、あの服装は司祭見習いね。
ちょっとーストップストップぅ」

その声に一心に走ってきていた司祭見習いが
我々の前で止まった。

「ほらよ、まぁ水でも飲んで落ち着きな」

若いシーフが水の入った筒をさしだすと
司祭見習いはごくごくと水を飲んで
一息ついた。

「それでどうしたの?ん?」

女魔法使いが尋ねると、
司祭見習いが真っ赤になって
しどろもどろになりながらも
言うには

俺達が向かっていた村は
すぐ近くにあって、
その村はずれにある教会が
もうすぐ見えるとのこと。

その教会の壁には、
はるか昔の有名画家が描いた
聖者の絵があるのだが

「実は何百年も経って
絵が痛んできてしまったのです。
それで村で修復しようと
見積を出したのですが、
あまりにも高名な画家の絵の為
高額過ぎてとても直せないという
ことになりました」

「へぇ、それは大変だな」

若いシーフが相槌を打つが
興味を失った声音だった。

すると司祭見習いは首を横に振って

「それならまだいいのです。
積立金をすればいいだけですから。
問題なのは・・・」

「もんだいなのは?」

おんな魔法使いが小首を傾げて
続きを促す。

「村のおばあちゃんが、
高名な画家の絵の上に
全く似てない絵を描いてしまったのです!」

しーん・・・
俺達三人は絶句した。

司祭見習いさんはおいおい泣き出して

「あの絵は、知る人ぞ知る絵なので
あの絵を目当てに画家さんが模写をして
小額ながらも献金をされて
教会の運営にも貢献してくださる
ありがたい絵だったのに・・・」

「ま、まぁとりあえず教会に行ってみましょうよ」

いたたまれなくなった女魔法使いが
現状打破の為か、俺達にそう提案した。

司祭見習いさんは、袖で涙を拭いて

「とりあえず、私は町の教会に相談に
伺います」

と言った。

「おう、俺達は村の教会に行ってみるよ。
この一本道を行けばいいのだな」

司祭見習いは小さくうなずくと
町へと走り去っていった。

そして俺達三人も村の教会へと走りだした。

教会が見えて、その中に入ると
中央の祭壇左側の壁の側に
うずくまっている人がいた。
装束から判断して司祭のようだ。

俺達はアイコンタクトをして
そっと、司祭の側に近づいた。
すると、司祭が俺達の気配に気付いたのだろう。

よろよろと立ち上がると、

「ようこそこの村へ。
なにか御用はおありでしょうか」

と、沈んだ声で言った。

「あ、あの先程司祭見習いさんにあって」

おんな魔法使いがしおらしく言うと

「ああ、ではこの絵のことで
来られたのですね」

そう言って見せてもらった絵は

「う!これ人間じゃねぇよな。
けむくじゃらのモンスタールーサに
そっくりだぜ」

若いシーフが言うと

「そ、そんなことないわよ。前衛的よねぇ、
剣士」

女魔法使いに促されて、
俺はとりあえずコクコク頷いた。

司祭様は俺達に羊皮紙を広げると

「実際に描かれていた絵は
このようなものでした。
数十年前、模写をした若い画家が
奉納していったものです」

そこには美麗な中にも威厳溢れる
聖者の絵が描かれていた。

うわぁ。村のおばあちゃん、やっちまったな。
俺達三人は無言で事態を察した。
すると女魔法使いが

「そうだわ!これ、呪文タッカーではぎとればいいのよ。
剣士、聖剣エクスカリバーを出してちょうだい」

俺は疑問に思いながらも
聖剣エクスカリバーを女剣士の前に差し出した。

「いい?剣士。その剣に呪文タッカーをかけるから
村のおばあちゃんの描いた絵の具の部分だけ
はぎとってちょうだい。
間違っても、高名な画家が描いた部分をはぎとるんじゃ
ないわよ」

そんな難しいことをと言おうとする間も与えずに
おんな魔法使いは呪文を唱えて

「今よっ」

と叫んだ。
その言葉に反射的に反応した俺は

ザンッ

と、村のおばあちゃんが描いた絵の部分を
切りはがしていた。

「おお~Σ(・□・;)」

周りにいた全員が驚きの声を上げた。
そう、俺は高名な画家の描いた絵には
少しも触れずに、
おばあちゃんの描いた部分だけを
はぎとったのだ。

その時、

「あ、あんたらは何をしてくれるんじゃぁ」

振り向くと、入り口のところに
老婆が一人立っていた。

「あれが、あの絵を描いた村のおばあちゃんです」

司祭が小声で俺達に教えてくれた。
すると村のおばあちゃんが

「あ、あんたら。あの教会に描かれていた元の絵は
この教会の下に眠っているモンスターモグーラを封じるために
描かれていたのじゃ。
だが時代が経つにつれ絵が薄れ効力が落ちていた。
そこで神様が夢枕に立って、
あたしに絵を描くようお命じになったのじゃ」

「はいはい、おばあちゃん。
家に送りますから。その前に教会で
温かいスープとパンでも食べて・・・」

と言った瞬間。
グラグラと教会が揺れた。

「ちょっ、ちょっと今透視してみたけれど
このおばあちゃんのいう事は本当よ!
確かにこの教会の下にモンスターモグーラが
いるわっ。それもとても大きいのがっ」

そう女魔法使いが叫んだ瞬間!

モグーラが教会の俺達がいる反対側に
その姿を現わした。
もちろん、教会の半分は木っ端みじん。

「こ、こんなのどうすればいいんだよっ」

若いシーフが叫んだ。
すると女魔法使いが村のおばあちゃんが描いた絵を
掴んで、

「この絵をモグーラの額に貼り付けるのよ!」

と言って、若いシーフに渡した。
するとそれまで黙っていた俺は

「いや、この程度のモンスターならば俺一人で十分だ。
実際今も睨み合っていて奴は一歩も動けないようにしている。
倒すぞ」

俺は、そう言うと聖剣エクスカリバーを構えて
タンっと跳躍した。

後ろで村のおばあちゃんが何かを叫んでいたような
気がするが、気のせいだろう。
そんなことを思いながら大きく聖剣エクスカリバーを
ふりかぶって、モンスターモグーラを一刀両断した。
どどうっと倒れるモンスターモグーラ。

それを後ろに着地する俺。
これで後は女魔法使いが粉塵の呪文で
モグーラを土に返せば完璧だ。

多少の犠牲は
パンっ
俺は頬を打たれた。
そこには怒っている女魔法使いがいた。
そして

「い~い?
モンスターモグーラはねぇ。
確かに動き回れると地震を起こすは
地面がぼこぼこになるわ迷惑な存在なの。
だけどねぇ。
眠っている状態だと
土にいい波動の息を出して
農地を豊かにするのよ。
ど~し~てくれるのよぉ!」

・・・どうしようもできない・・・。

仕方なく、おんな魔法使いが
小さなモンスターモグーラを数十匹
呪文で呼び集めて眠らせて
土に埋めた。
その上に石を置いて、
村のおばあちゃんが描いた
モンスタールーサに似た絵を
貼り付けた。

その後、近隣の町や村の人々が
やってきて、高名な画家の描いた絵と
村のおばあちゃんが描いた絵を
観光で見に来ることになり、
教会の修繕費は勘弁してもらえた。

・・・・・・・・・・
「ああっもう。
あともう少しで大儲けできたのにぃ」

昼下がりの眠たくなるような陽射しの中。
女魔法使いの絶叫が響いた。

ジト目で俺を見る若いシーフの視線が痛い。

結局俺はパーティーを追い出された。
無念だ。
でかい獲物が現れば倒したくなるのが
剣士の習性。
トボトボと歩く俺。

そんな俺に声をかける者がいた。

「ねぇ、あんた剣士?
良かったらあたしたちとパーティー組まない?」




善き事がありますように。
お読みいただきありがとうございました。
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望外な喜びです。
宇宙生物ぷりちーぴm(__)m

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