5遥か銀河に手を伸ばし:ある人生に栞をはさむ時
*ショートショート:NASAがマッドサイエンティストNASAに形態変化する容姿を持った元地球監察官の宇宙人の話
一隻の宇宙船が宙空を光の速度で進んでいる。
その船の一室で一人の男がコーヒーを飲んでいた。
室内は静かそのものだった。
「ジェルドサマ コーヒーノオカワリハイカガデスカ」
「そうだなもらおうかな」
元地球保護観察官のジェルドは、読んでいる本から
目を上げずにそう答えた。
球形スケルトン家事ロボットと地球人体型に形成した
地球産の金色の全身タイツー相棒のオーディスいわく
「萌えメイドさん♡」に返答した。
そしてジェルドのそばのサイドテーブルに
金色の全身タイツのメイドはコーヒーを置いた。
「ジェルドぉ紙の本なんか読んでるの?」
部屋に入って来た相棒のオーディスが声をかけてくる。
「悪いか?」
ジェルドは顔を上げずに答えてページをめくる。
「いや、それ地球の本だろ?でも地球でも電子書籍が
普及しているじゃん?宇宙船の積載量を考えても
地球の電子書籍を本星の端末に収蔵すればいいんじゃね?」
オーディスはそういって金色の全身タイツメイドに
コーヒーをオーダーした。
ジェルドはちらりとオーディスを見て、
「別にいいだろ、オレは紙の本が好きなんだ。
地球では紙の本は無くならないだろうけれど、
電子書籍が主流になるだろう。
貴重な資産を保護しただけだ」
オーディスは、コーヒーを一口飲み、
「でも、それってお前の好みじゃないだろう?
『怪獣大作戦』なんて子供向けテレビの
怪獣特集の本じゃないか、小難しい小さい字を追うのが
好きなお前にしては異色だよなぁ」
ジェルドは頁をめくりながら
「オレは文字マニアじゃない。オレがこれを
読んでいるのは…いや、何でもない」
「へ?何何、教えてよジェルドちゃぁん」
「気色悪い声を出すな。お前には関係ない」
「ちぇ、ケチくせぇの。あ、俺システムチェックしてくるわ」
「早く行け。そして遅く帰って来い」
「うわぁ、ジェルドちゃんきつーい。いいもん俺には
金色の全身タイツメイドちゃんがいるもん。
メイドちゃん、行ってきま~す」
「オーデイスサマオキヲツケテ」
メイドはオーディスの消えたドアにお辞儀した。
それをちらりと見送ったジェルドは本に視線を戻した。
表紙に『地球大作戦』と大きく書かれて
ワニが2本足で立ち上がったようなゴツゴツした怪獣が
火を吹きビルを倒しているイラストが描かれていた。
「私の小さい頃読んでいたものなんです」
この本の元の持ち主は大事そうにこの本を撫でていた。
たまたま立ち寄った公園で1人ぽつんと椅子に腰かけた老人。
何とはなしに老人の過去の思い出を聞いていた。
路地裏で友と走り回ってヒーローになりきった話。
上京して必死で働いて高度成長期を過ごした青春時代。
家庭を持って家族を守り孫が生まれ妻と二人暮らしになり。
「私はある意味幸せな一生でした」
そうジェルドに独白した老人は静かにほほ笑んだ。
そして、老人の本はジェルドの手元に今ある。
彼は、この本が宇宙を旅するとはおもわなかっただろうな。
ジェルドは、ふっと笑ったのだった。 了
宇宙雑貨ぷりちーぴ
HP
一隻の宇宙船が宙空を光の速度で進んでいる。
その船の一室で一人の男がコーヒーを飲んでいた。
室内は静かそのものだった。
「ジェルドサマ コーヒーノオカワリハイカガデスカ」
「そうだなもらおうかな」
元地球保護観察官のジェルドは、読んでいる本から
目を上げずにそう答えた。
球形スケルトン家事ロボットと地球人体型に形成した
地球産の金色の全身タイツー相棒のオーディスいわく
「萌えメイドさん♡」に返答した。
そしてジェルドのそばのサイドテーブルに
金色の全身タイツのメイドはコーヒーを置いた。
「ジェルドぉ紙の本なんか読んでるの?」
部屋に入って来た相棒のオーディスが声をかけてくる。
「悪いか?」
ジェルドは顔を上げずに答えてページをめくる。
「いや、それ地球の本だろ?でも地球でも電子書籍が
普及しているじゃん?宇宙船の積載量を考えても
地球の電子書籍を本星の端末に収蔵すればいいんじゃね?」
オーディスはそういって金色の全身タイツメイドに
コーヒーをオーダーした。
ジェルドはちらりとオーディスを見て、
「別にいいだろ、オレは紙の本が好きなんだ。
地球では紙の本は無くならないだろうけれど、
電子書籍が主流になるだろう。
貴重な資産を保護しただけだ」
オーディスは、コーヒーを一口飲み、
「でも、それってお前の好みじゃないだろう?
『怪獣大作戦』なんて子供向けテレビの
怪獣特集の本じゃないか、小難しい小さい字を追うのが
好きなお前にしては異色だよなぁ」
ジェルドは頁をめくりながら
「オレは文字マニアじゃない。オレがこれを
読んでいるのは…いや、何でもない」
「へ?何何、教えてよジェルドちゃぁん」
「気色悪い声を出すな。お前には関係ない」
「ちぇ、ケチくせぇの。あ、俺システムチェックしてくるわ」
「早く行け。そして遅く帰って来い」
「うわぁ、ジェルドちゃんきつーい。いいもん俺には
金色の全身タイツメイドちゃんがいるもん。
メイドちゃん、行ってきま~す」
「オーデイスサマオキヲツケテ」
メイドはオーディスの消えたドアにお辞儀した。
それをちらりと見送ったジェルドは本に視線を戻した。
表紙に『地球大作戦』と大きく書かれて
ワニが2本足で立ち上がったようなゴツゴツした怪獣が
火を吹きビルを倒しているイラストが描かれていた。
「私の小さい頃読んでいたものなんです」
この本の元の持ち主は大事そうにこの本を撫でていた。
たまたま立ち寄った公園で1人ぽつんと椅子に腰かけた老人。
何とはなしに老人の過去の思い出を聞いていた。
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上京して必死で働いて高度成長期を過ごした青春時代。
家庭を持って家族を守り孫が生まれ妻と二人暮らしになり。
「私はある意味幸せな一生でした」
そうジェルドに独白した老人は静かにほほ笑んだ。
そして、老人の本はジェルドの手元に今ある。
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ジェルドは、ふっと笑ったのだった。 了
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テーマ : ショート・ストーリー
ジャンル : 小説・文学